2001年度後期後半キャンペーン

「StarlightRhapsody」



幕間



ステラフォース情報局

「この情報は確かかね」
「少尉からの情報が虚偽でなければ」
「うむ、あの男、如何せん情報の選択という点では未熟だからな。よけいな事まで調べろと要求してくる」

 といって、苦笑するのはステラフォース諜報部門、情報将校のディキンソン中尉だ。だが、すぐに表情を引き締める。
「宙賊が現れたというには間違いがないはずだ。上に掛け合う必要もあるあるな。あの不祥事以来、我々の主張を通すのは難しくなったが……やるだけのことはやらねばな。で、そのほかには特に目を引く報告はなかったのだな」
「はい、肝心の情報はまだつかんでいないようです」
「わかった。しばらくここを頼む。重要な情報を見落とさないように」
 そういうと、彼は足早に別室の方へ向かっていった。



宙賊皇帝艦隊旗艦

「提督、これがあの遺跡から発見された赤い宝玉のすべてです」
 赤い服に身を包んだ男、メッテルニッヒの右腕にして“紅の彗星”の異名を持つエフレム・フォッカーがかしこまる。彼の目の前にいる男こそ、“宙賊皇帝”アドルファス・メッテルニッヒその人である。
 メッテルニッヒは、鷹揚に受け取る。
「違うな」
「は?」
 怪訝な面もちのフォッカーに対し、メッテルニッヒは傍らに置いてある一枚の石版を見せる。
「この石版には、3つの窪みがある。その窪みには」
 といいながら、1つの宝玉を差し込む。それは紺碧の海を彷彿させるような青い輝きを放つ。
「このように宝玉が3つ入るようになっている。そしてそれらは互いに共鳴し合う。あの遺跡とこの青い宝玉は確かに共鳴した。だが、この赤い宝玉にはその傾向はない」
「……ということは、別の場所に移動した後……」
「フォッカーよ。今、あの惑星に“紅い蛇”の男がいるはずだ。手頃な駒として存分に使うがいい。期待しているぞ」
「アイ、サー」
 敬礼をして、フォッカーは力強く答えた。



太乙

「〈破軍〉はいるか」
「はい、ここに」
 薄太乙暗く、そして奥行きのあり静謐な空気が立ちこめる空間に一つの影が現れた。
 裏社会を牛耳る組織〈太乙〉、その〈太乙〉が有する最強のエージェント〈破軍〉。
「すでに知っているとも思うが、例の遺跡につけたものたちが、メッテルニッヒの手のものによって殺害された」
「……存じております……」
 かしづく〈破軍〉に対し、さらに言葉が続けられる。
「あの遺跡は、危険だ。このままでは世界の破滅がもたらされる。それは、我ら〈太乙〉が望むところにあらず。そこで……命ずる、奴らを阻め」
「はっ」
 静かに、だが、それでいて力強く命令に対し応える。
「今動けるものはいるか?」
「現在、〈貪狼〉のみ。すでに件の星域へ派遣しております」
「賢明な判断だ。すべては世界の安定のため……。〈破軍〉よ、場合によっては、他のものを招集してもかまわぬ。なんとしてでもメッテルニッヒの手に渡らぬようにするのだ、よいな」
「御意」
 その一言を残し、〈破軍〉の姿は消えた。



ミスリル星系近傍

「姉御、なんかまずい感じがしませんか?」
「なに弱気になってるの、カルロス。宇宙海賊が怖くてこの仕事やってられますか」
「せや、姉御のゆう通り。ここはばしっと決めなな」
「スティーブ、たまには言うこと言うじゃないの」
「いやあ、それほどでも」
「あ、兄貴ずるい、一人だけいいこぶって」

 とある宇宙航行船のコックピットの中、話しているのは、女一人と男二人。どうやら、女が二人の上司のようである。
「でもさ、姉御。護衛の仕事だったら、ジムにでも任せたらいいんじゃあないですか?」
「まあ、一理あるわな。気の合う二人っていうとこやし」
 カルロス、スティーブの責任転換発言に対して、
「これらこら、結局逃げ腰? さっきの発言はなんなのよ」
 姉御ことミリアは諫める。
「それはそれっていうことで」
「ふう、これだからあたしまで小言を言われるのよ、しっかししてよね二人とも」
 情けないとばかり溜息をつきながら、腰に手を当てて二人に向かって言う。
「そもそもあたしたちの仕事は、身辺警護としてでしょ! 宇宙海賊なんかにさらわれたらそれこそ一大事なんだからね」
「そうですね、あのときは大変でしたから」
 気楽な二人を見て、ミリアは天を仰ぐ。
「……言ってるそばから遠い目をして……先が思いやられるわ……」
 その姿を見たカルロスの一言。
「あ、姉御、そんなに思い詰めた顔すると眉間にしわが」
 ごすっ!
 鈍い打撃音がコックピットに響いた。



プロローグ | 第1話 || 第2話 || 第3話 | エピローグ




BACK