2001年度後期後半キャンペーン

「StarlightRhapsody」



第2話 遁走曲“ベルダンディー”〜無限の足音〜



運命の出会い

 オックスフォード教授に遺品を届けるべく、彼のいる大学へ船を向けるアッシタリュド宇宙商会一行――の、はずであった。だが、ソルマがジャンプを失敗し、思わぬところで時間をロスすることとなった。幸い、目的地の近くの星系であったため、時間の遅れは1日で収まった。再びジャンプを試みて今度は成功。何とか目的地のミューズ星系にまで到着する。この時間をロスしている間は、が残した写真のコピーをとったり、ニュースを調べたりして過ごした。

 惑星に降り立とうとすると、宇宙港の管制所から無線が入る。船の所属といった一般的情報の提示と、そして今回こちらへやってきた目的は何かと。それに対し、船の所属等を正直に話し、目的に関しては、ステイン助手の遺品を届けにやってきたと応える。それは何かと訊ねると、彼の残した日記であると回答。赤い宝玉に関しては伏せる。管制官がそれを警察に届けるとので渡して欲しいといったことので疑問を抱く。しかし、ここで逆らって怪しまれるよりはと考え、素直に手帳を渡すことを約束し、着陸許可をもらう。

 宇宙港で、一息つこうとしたとき、ラシュロンは見覚えのある人物に気が付く。そして、向こうもラシュロンの存在に気づき、嫌らしい笑みを返す。しばらく知らない振りをしてやり過ごそうとしても、向こうは後を追いかけてくる。仕方なく、人混みを使って何とかまく。追って来ていないのを確認して一息つく。

 今後の予定として、オックスフォード教授に連絡を取る必要があるため、アポを取るべく電話をかける。電話に出たのはオックスフォード教授ではなく、女性であった。彼女によると、ビーグル号事件の件で、教授は不在であるという。彼女の様子からは用件によっては、便宜を図ることも出来そうなので、ステイン助手の最期を見取ったことを話し、その詳細を伝えに来たのだと言う。それではということで、明日の昼にならと言うことでアポを取ることに成功する。

 地上はまだ昼間だったので、一足先に博物館を見学することにしたフリード達。明後日に特設展を行うということで、残念ながら展示物はほとんど別の所へ搬入されていて、司馬は以前に見たことのある展示物しか目に出来ず残念がる。その熱心な姿に打たれたのか、少女が声をかけてきた。栗色をした髪をポニーテールにしてまとめていた東洋人の趣のある少女であった。彼女の話によると、明後日の特設展の開催初日にはオックスフォード教授による講演もあるとのこと。宜しければ、といって興味を示したフリードと司馬、及びニシカワに割引券も3枚プレゼントしてくれる。フリードはちゃっかりと名刺を渡して自社を宣伝していたりもする。さらに、彼女の苗字が「月城」というのだと言うことまで聞き出すことに成功する。エルドラド文明談義をしばらくした後、彼女は、ソルマの「うだつの上がらない会社だ」というつぶやきを耳にすることなく、別れ際には笑顔を振りまいて去っていく。



ラシュロン、夜の街へ

 その夜、ラシュロンは一人夜の街をぶらつこうとする。それに気づいたソルマは、彼について行く。ラシュロンには、今日宇宙港で遭った男に用があった。その目的を神が見抜いていたかのように、ラシュロン達は出会った。男の名はガロンズ。現在、メッテルニッヒ傘下の宙賊の頭目をしている。そしてラシュロンとは浅からぬ因縁があった。

 ソルマはこの会話を録音しようとする。しかし、ガロンズに気づかれ痛めつけてしまう。その後で「エルドラド文明展で展示される予定の緑の宝玉を盗み出すのに手を貸して欲しい」と話をラシュロンに持ちかけてきた。うまくいけば、メッテルニッヒの配下になれるよう取り繕うとも言う。ラシュロンは「俺がほしいのはお前の命だけだ」と拒もうとする。だが拒めない。ガロンズはラシュロンの弱みを握っている。彼の恋人が人質になっていたのだ。ラシュロンは苦渋の決断でその用件を飲んだ。連絡は追って届けるということで、その場は解放される。ラシュロンはこのことを仲間にうち明けられずにいた。



オックスフォード教授

 翌日、オックスフォード教授の部屋へ向かった。教授室の間に来ると、なにやらおいしそうな香りが漂って来る。扉を空けると、中から三角巾をかぶり割烹着を着た少女が出迎えてきた。彼女を見て、あっと声を挙げるフリード。それは昨日展示場であった少女だったからだ。彼女の方もフリード達のことを憶えていた。彼女はオックスフォード教授の研究室の学生だったのだ。教授を元気づけるため、そしてお客様が来るということで、彼女が手料理を作って準備をしていたのだ。到着が予定より少し早かったための割烹着姿との遭遇だった。

 また、奥からは別の女声が聞こえた。昨日、電話で応呈した声の主である。縁なしの眼鏡をかけ、知的な輝きを瞳に宿している少女であった。彼女のファミリーネームはチューリング。彼女もまた、教授の下で勉強している学生であった。「まもなく教授がいらっしゃります」と言うこと。彼女に「それまで部屋の中でお待ち下さい」と案内され、フリード達はそれに従う。ラシュロンはこちらの少女を口説こうとするが、ガードは堅かった。

 しばらくすると、足音が聞こえ、2人がやってきた。一人はオックスフォード教授。ともう一人は、インターポールからやってきた村上仁(めぐみ)警部だと紹介される。彼女は教授の身辺警護のため、出向してきたのだと言う。立ち話は、ということで、教授が椅子を勧める際、少女二人の名を呼んだことで、二人の名は“月城桂”“ミティ・チューリング”ということがわかり、フリード及びラシュロンは目ざとくその名を記憶する。

 一同がそろったことで、本題に移ろうとしたそのとき、司馬は不意に気配を感じる。外で誰か様子をうかがっている者がいると。それが誰かと確認すると、助教授のアレイスター・ドーマンであった。明日の後援会等の最終確認のため、教授を訪ねてきただけだった。

 ドーマンの用件を住まさせて、しきり直し。出されたお菓子を食べて「これおいしいよ」というフリードに「それ、お店で買ってきたの……」と桂が答えるほほえましい(?)一コマもあったりした。しかし、フリード達が行う話は暗い雰囲気を伴った会話だった。ステイン助手の身に起こった悲劇に涙したり。そして、肝心の赤い宝玉の話を切りだした。事前にステイン助手の日記が届いていたこともあり、教授は日記の最後の方に残された赤い宝玉に関わりがありそうな詩を翻訳していた。そこに書かれていたものはこうである。

我らここに封印す
悪霊が再び目覚めぬよう
汝、立ち去るべし
紅き邪眼、碧き邪眼、翠の邪眼
再びすまることなし
時は閉じる
〈守護者〉よ
何人たりと立ち寄ること能わず
例え そが同胞でありとて
〈心の刃〉、天地を裂く光となり
全てを焦がす時がなきよう

 また、陳が撮った写真を見せるなどして、教授に陳の命を奪ったものは何だと伺いもする。しかし、教授は詳しいことは未だ解らないのだと申し訳なさそうに答える。ただ、彼は自分の解釈は述べる。それは、エルドラド文明は異星人とのコンタクトによって滅びたのではないかと。この碑文にある内容は、異星人に抗うための武器を作り、それを封印したのではないかという解釈も添える。では、教授がその赤い宝玉というものを見せて欲しいという話になる。フリードたちはメッテルニッヒが狙っているのだから持っていくのは危険だと判断する。が船に残しておくのも問題ありではないかと考える。話し合った結果、教授へ渡すことを決めて一端船に戻ることにした。と同時にニシカワは宝玉にこっそりと発信器をつけておいた。

 再び大学に戻り、赤い宝玉と、陳が撮影した写真のデータも提示した。その宝玉を見て、これとよく似た宝玉があるとオックスフォード教授は言葉を漏らす。それは同じ形をした緑色の宝玉で、今回の特設展示に出される予定にもなっている。その緑色の宝玉を発見した際には、謎の破壊兵器は存在していなかったが、厳重に隠されていたと教えてくれる。この時、司馬は赤い宝玉が緑の宝玉と共鳴している感じを得る。この宝玉がメッテルニッヒの手に渡るのは危険だと判断したフリードは「警備をします」と申し出る。だが、教授には雇うだけのお金はない。教授は丁重に断るが、せめてお礼にと特設展示期間中のスタッフ扱いのフリーパスと昼食を差し上げるという。また、調査船の保険金から遺跡から大学までの燃料費を工面しようともいう。その提示に対しフリードは礼を言い、ありがたく受けることにした。そして教授に渡した赤い宝玉は、インターポールが証拠物件のため警備すると言うことで落ち着いた。



不安、そして葛藤

 ホテルに戻った後、ソルマに女性の訪問者がやってくる。それは彼の直属の上司ディッキンソンであった。彼女は、情報は掻い摘んで伝えるようにと小言を言う。その上で、お前を派遣したのは、フリードとニシカワの行動を調べるためだという。手際のよい報告を出すことを命令し、失態を繰り返すようでは庇いきれないと警告を送り、彼女は立ち去っていく。その後ろ姿にソルマは、一抹のみの不安を覚えた。

 その夜、ラシュロンはフリードたちに彼女が人質に取られていて、件の緑色の宝玉を盗み出すことに荷担せざる得ないのだとうち明ける。それを聞き、どうしたらいいのだと頭を悩ませる。そうしていると、ラシュロン宛に電話がかかる。その相手はガロンズだった。明日、教授の講演会の前後に爆発が起こる、それが合図だと伝えてくる。そして、その際俺たちのサポートをしなければ、わかっているなとも脅して電話は切れる。仲間を裏切ることになると苦悶するラシュロンに対してニシカワは辞表を書くことを勧める。もしもの時には、この辞表があることで、フリードにかかる責任は軽減できる。ニシカワの提案に力強く頷き、ラシュロンは辞表を提出。そして、爆発が起こったときには行動を起こすと明言し、一人立ち去っていった。



邂逅

 翌朝、ソルマはフォッカーが動いたという情報を受け、より警戒しなければと肝に銘じる。運命の時間まで、警備員として展示会場内を見回るフリードたち。会場内でラシュロンはすでにガロンズの配下が潜伏していることに気づく。さらに、目をつけていたミティが親しげに見知らぬ青年と話している姿を見つけてしまう。その様子を見て、ソルマはラシュロンが口説こうとしたことを思い出してほくそ笑む。また、近くにいた司馬は、その青年に気づく、話しかける。するとその青年はかつて司馬が宇宙で漂流していたところを助けてくれた命の恩人だった。

 彼の名は、ジェイムズ・カルディナート、トラコンとして著名なシャインリバー社の腕利き社長である。司馬はフリードに彼は伝説のトラコンだと紹介する。なんでも、噂によると軍が起こした貴人を誘拐した大事件も解決したことがあるというほどだと。その話を聞いていて、その事件の首謀者であったサイクロプス大佐の名をうっかりと口にしてしまうソルマ。上層部がやっとの事でもみ消した事実であるのにだ。だが、秘密漏洩を敢えて気にしない司馬ら。せっかくなのでと、近くの喫茶店に場所を移し、再会を楽しもうと言うことにする。

 喫茶店には、フリード、司馬、ソルマ、ジェイムズ、ミティが行く。そこで、司馬は秘密裡にラシュロンのことを話す。それで、できればでいいが手助けをして欲しいと頼む。それに対して、ジェイムズはできる限りの範囲内では手助けをすると約束してくれる。

 そのころ、会場を見回っていたニシカワは、見覚えのある形状をした展示品を見つける。それは、先代が行方不明になる前に彼に保管を託したものと同じものであった。説明文には「咒具?」と書かれている。正体は明らかにはなっていない。これが原因で先代は事件に巻き込まれたのではないかと物思いにふけた。



襲撃

 時間は立ち、教授の講演会が始まろうとする。講演会場と展示会場は場所が離れている。各人は展示会場の思い思いの場所に身を隠す。そして講演会が始まったその時、小型機が講演会場に突如飛び込んできて、爆発が起こる。それが合図となり、ガロンズ一味が動く。ラシュロンはいち早く緑色の宝玉を手にして走る。ガロンズらをまこうとするが、まくことはできず、仕方なく彼らの指示する方向へ向かって走る。それを追って、ソルマと司馬が走る。また、フリード、ニシカワは、飛行機がつっこみ阿鼻叫喚の渦に包まれた講演会場へ向かって駆ける。騒ぎのさなかに、ヘリが会場のそばに降りてくる音も耳にする。

 講演会場にむかった2人は中でパワードスーツが暴れていることを目撃する。うち、3体がオックスフォード教授を抱えて撤退しようとしている。また、紅のパワードスーツをまとったフォッカーと生身の村上が一騎打ちをしていた。人の流れの中には、「おじいちゃん!」と教授を呼び泣き叫ぶ桂の姿もある。フリードは「教授をはなせ」とパワードスーツスーツに向けてレーザーライフルを放つが装甲を貫くことはできない。

 ニシカワは逃げまどう人々を誘導する。その時、ニシカワは一騎打ちを繰り広げているフォッカーと村上の様子を見てあることに気づく。フォッカーが手にしているフォースソード、村上が持つ光を放つ十手が先代の持っていたアイテムと類似していることに。そのことに思い至ったニシカワは会場に向かい、例の咒具を確保しに向かう。

 フリードは相手が放ったロケットランチャーをかわし、逆に相手の武器を破壊する。だが、その間に教授はヘリコプターに運び込まれてしまう。フォッカーは、全砲弾を村上に向けて撃ちだして足止めをして、その間に撤退する。フリードは諦めず、フォッカーに向けレーザーライフルを撃つ。この光弾は、フォッカーの紅のパワードスーツの頬の部分をかすめるように装甲をはぎ取る。フォッカーは立ち止まり、フリードを睨み付ける。そして「お前はあのときの」と呟き、「貴様がこの傷を付けたということを覚えておこう」と一言残し、ヘリに乗り込み、教授を連れて飛び去ってしまう。



ガロンズの最期

 一方、ラシュロンは、撤収のためにヘリに乗り込むという段階で立ち止まる。早くしろというガロンズに対し、緑色の宝玉と彼女とを交換だと言うが、彼女のみを案じるのならこっちに来いとガロンズが優勢なままである。ラシュロンは唇を噛みながら、渋々乗り込もうとする。だがその時、遠方より一条の光が彼の手元をかすめ、手にしていた緑色の宝玉をはじき飛ばす。それを追って、ガロンズ、ラシュロン、司馬、そして“力”を使ってソルマが手を伸ばす。

 一番早かったのは、ガロンズだった。彼はすかさず仲間のいるヘリの方へ投げ入れる。そして、ラシュロンとともに邪魔をする司馬に反撃をしようと試みる。しかし、ラシュロンの狙いは宝玉ではなくガロンズに向けられた。すかさず単分子ワイヤーを彼の首に巻き付ける。ソルマも単分子をガロンズに突き立てる。「どういうことだ」というガロンズに対し、ラシュロンは「この時を待っていた」と冷たく言い放つ。部下に助けろとガロンズは言うが、「お前の部下ではない、メッテルニッヒ閣下のために働いているのだ」といって、機関銃を乱射して彼を見捨てて飛び立ってしまう。ラシュロンとソルマはガロンズを盾にして切り抜ける。幸い司馬には当たらなかった。司馬にはこの場を二人に任せて、フリードの元に走り出した。

 ラシュロンは、虫の息となったガロンズを抱えるようにして、恋人の身はどうなっているのかと問う。そして、彼女は無事であることを知らされ安堵する。また、今回の事件について何を知っていることを問うと、緑の宝玉がエルドラド文明の兵器を起動させるのために今回の事件を起こしたのだと暴露する。だが、彼は肝心な起動方法やメッテルニッヒの居場所について知らなかった。

 ガロンズは「俺が悪かった、もう一度“紅い蛇のカミソリ”と言われたお前とやりなおそう」と命乞いをする。それに対し「お前には世話になったから」とラシュロンはいう。一縷の希望を見いだせたと感じたガロンズ。だが、ラシュロンは彼の首に巻いた単分子ワイヤーを握る手に力を込める。彼にとって、宙賊“紅い蛇”にいたことは、自分と恋人の人生をめちゃくちゃにした忌々しい過去でしかないのだ。ガロンズは「助けてくれるのではなかったのか」と言うが既に時すでに遅し。「せめて苦しまないように楽にしてやる」とその首は刎ねられた。幸か不幸か、この会話を聞いたのはソルマ一人であった。



敗北

 講演会場の方では、フォッカーの攻撃を十手を前に突きだしてバリアを張ってしのいだ村上は、飛び去っていくヘリを憎らしげに一瞥した後、きびすを返す。そして司馬とすれ違いざまに、「あなたとはまた会うこともあるでしょう」と思わせぶりなせりふを残し、ここを生き残った部下に任せていずこへと去っていく。地獄絵図のようになった講演会場の中で、桂はフリードにすがるようにしてその胸で泣く。フォッカーを逃がしてしまったことを悔やむフリードは、「報酬なんて言っている訳にはいかない、自分のためにも君のためにもおじいちゃんを必ず取り戻し、そしてメッテルニッヒの野望をうち砕いてみせる」と力強く約束する。そして、途切れ途切れになりながらもありがとうという桂に、さりげなくコートを掛けながら、細いその肩をそっと抱きしめるのだった。

 展示場の方で再び集まるフリードたちアッシタリュド宇宙商会の面々。それに加えて、ジェイムズとミティ。さらに「お嬢様ご無事ですか」とミティに駆け寄ってくる謎の三人組。フリードは今後何とかしてフォッカーらの居場所を探さなければならない、と今後の基本方針を打ち出す。すると、それを耳にしたミティは、「私はISCAに知り合いがいるので、情報を見つけ次第あなたがたに転送しましょう」と協力するといいだす。後ろの三人組は「お嬢様、また勝手に約束をなされては困ります」などといっているのを聞き流しながら。それに対し、感謝するフリード。また、司馬は赤と緑色の宝玉の波動を覚えている。幸い、赤い方はフォッカーらの手に落ちていない。必ず教授を助け出し、野望をうち砕いてみせる、そして桂に再び笑顔を取り戻して欲しいと拳を握りしめ、心に闘志を燃やすフリードであった。



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