普通の紹介は概要とシステム紹介でやったので、ここではちょっと突っ込んだ話をしてみましょう。
「平安夜曲」では「吉凶システム」というシステムがあります。このシステムによってゲームにメリハリが出来ておもしろくなっているのですが、実はこのシステムがあることによって、ある特定の状況では、能力値が高くなればなるほど失敗しやすくなるという確率の逆転現象が起きています。
ここではそのあたりを詳しく見ていきたいと思います。
※使用されるダイスは全て6面体です。
概要とシステム紹介では簡単にしか説明しませんでしたが、行為判定システムと吉凶システムを詳しく説明すると以下のようになります。
まず、「使用する能力値」に応じた数のダイスを振り、最も高かった出目に「関連する技能」の修正値を足して達成値とする。(参照:表1、表2)
次に、マスターの決めた難易度と比較して、同じか達成値の方が高ければ、判定は成功となる。
甲 | 乙 | 丙 | 丁 |
---|---|---|---|
4D | 3D | 2D | 1D |
甲 | 乙 | 丙 | 丁 |
---|---|---|---|
+4 | +3 | +2 | +1 |
たとえば、心が丙、知覚が丁のキャラクターが難易度4の聞き耳を行って、3と5の目を出した場合は成功となります。
(例)聞き耳
使用する能力値:心(丙:2D)
関連する技能 :知覚(丁:+1)
ダイスの出目:3,5
達成値 :6
難易度 :4
結果:成功
出目が1と2だった場合は失敗となります。
まず、その日が吉日であるか厄日であるかを決定します。1Dを振って、出目が偶数なら吉日、奇数なら厄日です。
次に、吉日なら吉数を、厄日なら凶数を決めます。1Dを振って出目がそのまま吉数もしくは凶数になります。
行為判定の時にダイスを振って出目の最高の値が、吉数であれば決定的成功に、厄日であれば決定的失敗となります。
注:吉日なら吉数だけ、厄日なら凶数だけを決めます。
つまり、吉日は決定的成功は起きても、決定的失敗は起きません。
逆に、厄日には決定的成功は起きません。
これに関しては、もともとの成功や失敗は関係ありません。たとえ達成値が足りずに普通なら失敗する場合でも、ダイスの出目の最高値が吉数だった場合は決定的成功になります。
たとえば、行為判定システムの例で出したキャラクターが聞き耳の判定を行った日が厄日だったとします。そして凶数が5だったとすると、ダイスの出目の最高値が5なので、決定的失敗となります。
(例)聞き耳
使用する能力値:心(丙:2D)
関連する技能 :知覚(丁:+1)
凶数 :5
ダイスの出目:3,5
達成値 :6
難易度 :4
結果:決定的失敗
吉凶システムの確率の逆転現象を見る前に、吉凶システムがなかった場合に行為判定で成功する確率を見てみましょう。
ここで、目標値という値を導入します。これは難易度から関連する技能の修正値を引いたものです。
(目標値)=(難易度)−(関連する技能の修正値)
つまり、ダイスの出目の最高値が目標値以上だった場合は成功となるわけです。
吉凶システムがなかった場合、行為判定に成功する確率は以下のようになります。(表3)
甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 甲 | 乙 | 丙 | 丁 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
目 標 値 |
1 | 1296 | 216 | 36 | 6 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
2 | 1295 | 215 | 35 | 5 | 99.9% | 99.5% | 97.2% | 83.3% | |
3 | 1279 | 208 | 32 | 4 | 98.7% | 96.3% | 88.9% | 66.7% | |
4 | 1215 | 189 | 27 | 3 | 93.8% | 87.5% | 75.0% | 50.0% | |
5 | 1040 | 152 | 20 | 2 | 80.2% | 70.4% | 55.6% | 33.3% | |
6 | 671 | 91 | 11 | 1 | 51.8% | 42.1% | 30.6% | 16.7% |
これを見ると、いささか数値に偏りがあるものの、同じ難易度であれば、能力値が高ければ成功する確率は高くなっています。吉凶システムが無ければ、逆転現象は起きていないわけですね。
では次に、吉凶システムを導入してみましょう。
まずは、行為判定のダイスの出目の最高値が吉数もしくは凶数となる確率を出してみます。(表4)
吉数も凶数も同じように1D6を振ることによって決まるので、吉日に決定的成功が起きる確率と、厄日に決定的失敗が起きる確率は同じです。そのため、以下では簡便のため、決定的な成功と決定的失敗をまとめて「決定的な事象」、吉数と凶数をまとめて「決定数」と呼ぶことにします。
甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 甲 | 乙 | 丙 | 丁 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
目 標 値 |
1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0.1% | 0.5% | 2.8% | 16.7% |
2 | 15 | 7 | 3 | 1 | 1.2% | 3.2% | 8.3% | 16.7% | |
3 | 65 | 19 | 5 | 1 | 5.0% | 8.8% | 13.9% | 16.7% | |
4 | 175 | 37 | 7 | 1 | 13.5% | 17.1% | 19.4% | 16.7% | |
5 | 369 | 61 | 9 | 1 | 28.5% | 28.2% | 25.0% | 16.7% | |
6 | 671 | 91 | 11 | 1 | 51.8% | 42.1% | 30.6% | 16.7% |
実のところ、ここでも逆転現象は起きています。
決定数が3以下の場合は、能力値が高いほど決定的な事象が起きる確率が低くなっていて、4の場合は丙のときが一番起きやすくなっています。
ただこれだけでは、決定数が小さかった場合に能力値が高いほど決定的な事象が起きにくくなるというだけで、最終的な成功度はまだわかりません。
さて、いよいよ問題の吉凶システムを導入した後、最終的に成功する確率です。(表5)
この場合の成功には決定的成功を、失敗には決定的失敗を含めます。
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※赤字は逆転現象が起きている部分 |
吉日に関しては問題はありません。問題は厄日の決定数が4以上の場合です。表を見てもらえればわかると思いますが、決定数が4の場合は難易度1、5の場合は難易度1と2、6ならば1〜5で逆転現象が起きています。
基本的には確率の逆転現象はない方がよいのですが(能力値が高くなればなるほど失敗しやすくなるのでは、能力値を上昇させる意味がなくなってしまいますからね)、単純で面白いシステムを作るとある程度、そういった現象が起きるのは仕方ないでしょう。逆転現象はごく一部でしか起きていませんし、そのデメリットを上回るだけのおもしろさもありますし。
みなさんも自作のシステムを作られるときは、一度は確率の計算をやってみてください。結構、システムの善し悪しが見えてきますから。
この原稿を書くきっかけとなった成功度表を作ってくれた先輩のSさんに感謝。