第5話:クリスタルGET作戦。
芸術の街と恋のお話の巻

 雪の街を空路あとにしたPC達は、最終兵器の燃料となるクリスタルを求めて“大地の裂け目”のあるフォンティーヌに向かった。座ったきりで8時間の長旅である。

 フォンティーヌは芸術家の多い街であり、ディレッタントや収集家も多い。PC達が必要とするクリスタルも、現在は芸術品や宝石としての用途しかないのであるから、それも当然かもしれない。
「エコノミー・クラス症候群」とかいうあり得ない言葉が飛び交う中、若干燃料に不安を抱えつつも、無事にフォンティーヌに到着。

 しかし当のフォンティーヌの方は無事ではなった様子で、煙が立ち上っているのが見える。すわ一大事と身構える一行だが、火はすでにくすぶっているように見えるため、街はずれに飛空艇を隠し、マイトレイアスを見張りに残し街に入った。
 街に入ってみると広場のあたりなどに破壊の跡はみられるが、今は敵もおらず、たいしたことはない様子である。
 街の人に話を聞いてみると、《宵闇の口》の連中が空から襲ってきたあとらしい。「大降魔復活の暁には人類は我々が支配者となるのだ」などと喧伝していったとのこと。まめな連中である。

 ここでも法教会などが示威的におそわれたようだが、街の人々の心配は「今年の芸術大祭が予定通り行われるのか」である。あまりの平和ボケっぷりに、却って感心するPC達。

 目的の水晶について聞いて回ると、最近は掘りやすいところをあらかた掘り尽くしてしまい、純度のよいものはあまりとらないということがわかる。純度とサイズが十分なものを持っているのは、収集家しかいないらしい。
 現在は裂け目の上部でのみ採掘しているという話なので、飛空艇を使ってもっと底の方で採掘するという案も出るが、それなりに手間と時間がかかりそうなので、とりあえず今あるものを金で買い上げられないかどうかを調べてみることにする。

 研究のためにクリスタルを入手しようとしているというアトラスの支部に話を聞きに行くと、適当なクリスタルを持っていそうなのはイレーヌ=コッラードセルジョ=バルドーであることが分かるが、なぜかルフトにいるドレイク(キールの親戚)も同程度のものを持っていることがわかる。
 ドレイクがキールの親戚であることは他のPCは知らないのだが、一体なぜそんなものを持っているのかは全くの謎。ひょっとして空中戦艦の燃料にしていたりはしないだろうな、などという憶測も飛び出す。

 フォンティーヌにいる2人のクリスタル所有者はどちらも普通の収集家らしく、特に変わった噂もない。これは普通に取引して買い上げるしかないようである。

 そこで参考までにパーティーの所持金を確認してみると、日本円で30万換算ぐらいらしいことがわかる。この人数で旅をしていれば、生活費で終わってしまう額。とてもじゃないが買うことは出来ない。
 何か「珍しいもの」でも渡して交換できないかと相談してみるが、マグラが持っている「魔術結社の証(注:降魔汚染されています)」や、「セラフィーのペンダント(注:肉親の唯一の手がかりです)」などしかあがってこない。
 先ほどの襲撃でどちらかが被害を受けたりはしていないか、などとせこい考えも巡らすが、それもない様子。仕方がないので、姑息なマネはあきらめて話を聞きに行くことにする。時刻はすでに昼も遅い頃。

 ここでマグラは「金持ちは性に合わない」とのことで、ひとり分かれて採掘職人に話を聞きくため酒場へ向かった。「このあたりで一番の腕利き」を尋ねると、「それならゲンさんだ」という返事。総員の一致した見解では「源さん:男:江戸っ子」であるが、さて江戸とは何処だ?

 とにかく源さんに話を聞いてみることにしたマグラは、まず他に誰かクリスタルを集めているものがいるかを尋ねてみるが、特に目立った動きは見受けられない。
 そこで、「ところであんた、地の底まで潜ってみる気はないかい?」と採掘に勧誘してみると、源さんはかなり興味を引かれた様子。掘ることになったら改めて話しに来る、と告げて分かれた。

 残りの一行も、ディレッタントとの交渉は学者とディレッタントが適任ということになり、ジンとセラフィーとミリアは水晶細工師の工房を見にいくことにする。

 まず、イリーナの元を訪ねた一行は「収集」の名目で譲ってくれないかと商談を持ちかけに行くが、イリーナは正真正銘のコレクターである様子で、クリスタルの美しさについて語ってくれる。
 「お金ではない」というのをおして金額を聞いてみると、日本円で億程度の値段になることが分かる。これほどの値段となると、アトラスから資金を引き出すのもおおごとである。
 参考までにそのクリスタルが彼女の総資産に占める割合を見積もってみると、4割程度になるらしい。これでは、何か変わったものと交換するというわけにもいかないだろう。

 彼女の御機嫌とりも兼ねて収集品を見学して回った2人は、去り際にもう1人の収集家セルジョについて彼女に聞いてみた。すると、セルジョがクリスタルを買ったのは彼女のすぐあとで、「ライバル心でもあるのかしら」との感想を聞かされた。

 街で水晶細工の工房に行ったジン達だが、すでに作業が終わる時間であることもあり、めぼしい情報は得られない。あきらめて帰ろうとしたジン達だったが、そこでは思いもよらない遭遇が待ちかまえていた。
「君こそ僕が探し求めていた人材だ!!!」
 そう叫んでセラフィーの手をがっちりと握ったのは、おかっぱ頭にベレー帽の男。芸術大祭に出品する絵のモデルを探していたらしい。ちなみに、出品するつもりだとすでに作品が完成していないと非常にまずい日程である。
 舞い上がった勢いのままモデルを懇願してくる彼からPC達が逃れようとしたとき、反対側から全く同じような顔と姿をした男が現れて、今度はミリアの手を取って言った。
「すばらしい、パーフェクト!!!」
 今度の男は、最初の男の双子の兄弟らしい。同じく絵のモデルを探していたところらしく、どちらが目をつけたモデルが美しいか、などと討論?を始める。ちなみに、1人目はアロルド・アレッシオ、2人目はシモーネ・アレッシオと言う名前である。
 とにもかくにも、PC達は「話は明日ということで」とその場から逃げ出すのだった。

 宿屋で合流した一行は情報を交換するが、特にめぼしい収穫もないため、自然と話はモデルの話へ集まった。「どうせクリスタルの入手には時間がかかるから」という理由で、やってもいいのではないかという話になるが、本人達は踏ん切りがつかない。一応、2人の画家の評判を聞いてみると、それなりの腕を持っているらしい。

 マイトをそのままにおいておくのも問題だということになって、マグラが交代することにして飛空艇の隠し場所に戻る。
 そこでマグラからモデルの件を聞いたマイトは「それじゃあ決定だ」と、ミリアがモデルをすることを勝手に決定してしまう。そして、ミリアがモデルになることが決まってしまうと、何となくセラフィーもモデルになることになってしまうのであった。

 その夜、目端判定に失敗したマグラが「マイトレイアス、いったい何処を改造したんだ!」と飛空艇内で騒いでいたのは誰も知らないことである。


 翌日、ヨセフとキールはもうひとりのディレッタントであるセルジョのところへ、ジン、セラフィーはアロルドのところへ、ミリアはマイトにつれられてシモーネのところへ向かう。

 セルジョの家にいったPC達は、その財産規模がイレーヌよりも下らしいことを見て取ってため息をつくが、とりあえず中に入って話を聞くことにする。セルジョはイレーヌより若干年下の男で、PC達がイレーヌのところにも行ったという話を聞くと、快く話を聞いてくれる。
 収集品を見せてもらうが、イレーヌのいうとおり彼女と同じようなものばかり集めているのが分かる。なにやらイレーヌのことを必要以上に意識している様子の彼をみて、それとなくイレーヌのことをどう思っているのか探ってみると、どうやら彼女の収集に張り合うことで自分のことを認めてほしいと思っている様子。
 年下で財産も下、ついでに押しまで弱い感じの彼に、若干同情気味のPC諸氏。

 「ここは何か彼女をあっといわせるようなものを手に入れて、見返してやろう」と提案してみるが、どうもこれというものを思いつかない。
 これは源さんに頼るしかないのか?というわけでクリスタル採掘の産業構造を確認すると、鉱床の採掘権があってその場所で掘るものらしい。
 そこで、シモーネに採掘権を融通してきてもらい、我々が「ずっといいクリスタル」を採掘、そのクリスタルの代わりに今のクリスタルを譲り受けるという条件を提案する。
 採れるとは思えないといて渋るシモーネをキールの「アトラスの学者」という権威と、ヨセフが切った手形で説得して採掘権を用意してもらうことにする。

 マイトはミリアを送り届けたあと、再びマグラと交代しに飛空艇に戻る。彼から二人がモデルをしにいったと聞いたマグラは芸術大祭の審査方法を聞いて回る。
 審査は20人程度の審査員によって行われるそうである。ちなみに、イレーヌは審査員、セルジョはそうではないらしい。
 一通りのことを聞き出したマグラは、どういう訳か「料理で芸術大祭に出場する」ことに決めたらしく、まず考えたのが「審査員の買収(笑)」。これは難しそうだと分かると、この街の一流レストランの前で「どんな料理がでるのか聞き込み(笑)」を始めた。

 セラフィー達が画家のアトリエに行くと、そのまま絵のための衣装を買いに行くことになる。どんな衣装かとおそるおそるついて行くと「ただの白いブラウスと紺のスカート」。至って普通である。フリルもついていない…
 アトリエに戻ったあとはいろんなポーズでデッサンをとることに。しばらくたってデッサンは平和に終了。衣装は持って帰っていいことになった。

 ここで、ミリアがどうなっているのか気になった2人は、もう一つのアトリエへ。まだデッサンをとっていたミリアの格好は……ピンクのワンピース、フリル付き、ショート丈。一応、似合っていないこともない。
 ミリアはいらない様子だったが、自分が着てみたいとのセラフィーの主張でこれももらって帰ることに。

 マグラは夜になって源さんのところに行くまでの間、出品する料理の「調合」をすることにする。
 とりあえず「誰が食べても美味しいと思う料理」にするために薬を投入する作戦。芥子の実入りブラックカレー?調合には成功するものの、PCは食べてくれない。
「仕方ない、犬にでも食わすか。」
「犬だと致死量が違うと思うが。」
 致死量がある料理というのもきわめて問題である。
 誰も食べてくれないこのカレーだが、怖いもの知らずのマイトは平然と食べて一言「まだまだだな」などと意味深な評価を下すのであった。実に丈夫な男である。

 ヨセフは「非常燃料を兼ねて」クリスタルのアクセサリーを複数購入。キールはアトラスの支部で芸術大祭の審査員リストを探してみるが無かった。マグラに触発されたセラフィーも、待ち時間の間に機械仕掛けのオブジェを制作することにして設計図を書き始めた。

 夜になって源さんに話をすると、相変わらず大乗り気で、飛空艇などという非常識なものを目にしても、怯える様子はない。採掘に必要な人間も知り合いから口の堅い人間を集めてくれるということでその場で話は決まる。
 あとはセルジョが採掘権を用意してくれるのを待つだけである。採掘の間の燃料としては、屑石を大量に仕入れて使うことにする。

 源さんと別れて宿屋に戻る途中、予想外の人間に遭遇する。マグラの父、フィルド=サイスである。フィルドはPC達に祭司長・ケイオスに会うように言っていたので、ここにいることを詰問されるが、何とかごまかしきって、彼がここにいる用向きを尋ねる。
 実はエピニカが襲撃され、黒の月のかけらが強奪されたことを受けて、法教会はアトラスと協力、《宵闇の口》の拠点があるというクレーター内部の調査を開始することになったらしい。
 彼は《宵闇の口》の襲撃に対する警告も含めて連絡を届けているらしい。クレーターの調査は一週間後である。隣の都市に行くのに三日かかる世界で一週間後の出発は急である。
 ちなみにマグラの正体はすっかりばれている様子であるが、異能者である証拠がないということでそのまま去っていった。
 事態は急展開しているようであり法教会の立てている計画も気になるが、PC達はクリスタルの入手を優先することにした。

 明けてセルジョから採掘権の用意が出来たことの連絡を受けたヨセフ・キールは、採掘に必要な物資の手配と燃料用の屑鉱石を買い集める。
 ジン達は「未知の驚異」に備えるために弾薬類の補充を行った。

 暇を見つけてセラフィーはオブジェを設計するが失敗。マグラは「料理では出品が難しい」ということでフライパン・オブジェを作ろうとするが進まず、イレーヌの肖像を書いてセルジョに売りつけようなどとしているが、これも失敗。一体何をしているのやら。

 夜になって源さんと合流した一行は、飛行艇で飛んでいるところをみられないために薄暗いうちに下に降りることになった。
 早朝には他の作業員をおろせるよう、夜のうちに採掘場所の当たりをつけることとなり、計器飛行を怖がるセラフィーをよそに源さんを乗せて大地の裂け目に降りることになる。源さんに採掘場所を決めてもらうと……深さ300メートル。深すぎる(笑)。
 しかし、この位置からも裂け目の底は全く見えない。我々の恐怖をよそに源さんはうれしそうである。
「ここならいいものがいくらでも採れそうだ。」

 残りの作業員を運ぶために飛空艇は地上に戻ったが、源さんとジンは足場の作成のため、キールは作業のために残った。その作業中、下の方で何かが音もなく動くのをキールは目撃するが、作業に熱中する源さんには報せないでおいておく。
 他の作業員も降りてきて作業が始まる中、その知らせを聞いたヨセフとマイトは十分な火器を用意して崖っぷちに設置することにし、他には報せないでおいておくこととする。

 源さんの予想では三日あれば目的のものが採れるだろうということなので、大過なく終わるかもしれない。ちなみに、「何か」の大きさは「象三体分」らしい。
 こうして、地下一日目は大過なくすぎた。セラフィーは暇つぶしにオブジェの設計・製作を続けている。

 二日目、ついに「何か」が我々が作業をしている岩棚の近くを通るのを目撃する。その何かは「巨大なナメクジ」のような半透明のもの。粘液の跡を引きながら近づいているその姿に、マグラが大声を上げる。
 それを慌てて制したあと、一同は息を潜めてその巨大ナメクジの様子を見守る。
「マグラ……塩、200キロぐらいあるか?」
 気を取り直して採掘は再開され、目的の半分ぐらいのクリスタルがいくつか採れた。ヨセフはそのクリスタルをジョセフに渡して、とりあえず手形を取り戻す。
 その帰りに、大量の塩を購入して帰ることにする。

 三日目、今度は巨大ナメクジはPC達のいる岩棚に近づいてくるのが分かる。作業を止めて見守っていると岩棚の周りを回り始めたので、下に来たところを狙って塩を投下。巨大ナメクジは身をよじって逃げていった。

 その直後、目的のサイズのクリスタルを切り出すことが出来たことを聞いたPC達は、予備燃料もほしいところではあるが、これ以上ここにとどまるのは危険と判断して撤収を開始。設置した資材の片づけを始める。

 掘り出したものと作業員を地上に連れ戻した頃、岩棚の下から大量の巨大ナメクジが近づいてくるのが発見される。大量の塩と戻ってきた飛空艇のダウンライトで牽制しつつ、PC達は飛空艇内に避難、ほうほうの体で逃げ戻ることになった。
 結局、巨大ナメクジの生態については謎のままである。

 ともかく、クリスタルを納品して約束通りにセルジョのクリスタルを入手したヨセフは、彼をたきつけてお披露目のパーティーを開かせ、イレーヌを招待させることに。PC達も古いクリスタルを譲ってもらった縁、ということでパーティーに出席することにする。
セラフィー「私はどちらかといえばこのオブジェを完成させたいのですが・・・」
ヨセフ「イレーヌさんは審査員だし、目の肥えた人にアドバイスをもらったらどうだね?」
 結局、全員参加となったパーティーであるが、男性タキシード、女性イブニングドレスというヨセフの指示に墓穴を掘ったことを知るセラフィーとミリアであった。ちなみに、金持ち嫌いのマグラは厨房でコックからお勉強である。

 パーティーでセルジョの様子を見ていたヨセフであるが、どうも動きがないままイレーヌが帰ってしまいそうなので、セルジョを焚きつけたりイレーヌに吹き込んだり色々画策する。
「そうですな、このクリスタルに将来の奥様の名前でも付けたりしてはどうですか」

 結局、たいした進展もないままパーティーは散会、セラフィーのオブジェはそれなりに好評であった。セラフィーはオブジェをセルジョに預けて出品してもらうように頼むことにして、翌日、祭司長に会うためにエピニカに飛び立った。

 マグラは教会に近づくのを怖がったが、「法教会で僧侶として認めてもらえば、魔道じゃなくて奇跡ということになるんじゃないか」との言葉で一転会いに行くことに。

 どうやら、クレーターへの討伐隊はすでに今朝方出発した様子である。祭司長ケイオスにあって話を聞いてみるが、マリオが空中戦艦との接触に成功しているらしいという報せを受け取るに留まった。
 マグラは半日程度の手続きと儀式を経て無事教会の人間となったが、炎を用いる呪文などは奇跡には無いようである。それでも、回復呪文を人前で使えるだけでも違うだろう。

 一行はルフトに戻り、待たせてあった調査隊とキールの師・ウーゴと合流。調査隊を出発させ、PC達とウーゴは飛空艇で島に向かうことにする。

 明日の朝に出発ということになり、ルフトの街を歩いていたキールは叔父のドレイクと再会、今度はきちんと挨拶を交わす。ドレイクの人となりを疑うキールであるが、特に怪しいところもなく、彼の家に招待されてしまったりする。
 ドレイクは妻と子供と平和な家庭を気づいており、クリスタルも投資目的で購入したとのこと。そのクリスタルも見せてもらい、「空中戦艦の燃料にした」という疑惑(笑)も払拭された。

 一方、飛空艇の見張りのために残ったジンとセラフィーだが、セラフィーは三眼族の集落に受け入れてもらえるかどうかという不安をジンに吐露するのであった。


 翌日、飛空艇に興味津々のウーゴ先生を乗せて飛空艇は飛び立つのであった。
「そういえば、この飛空艇の名前は?」
「……じゃあ、『人類の希望号』」
「そんな大げさな名前を付けて戦艦の方はどうするんですか!」
「じゃあ、そっちは『最後の希望号』」
「………」

第6話へつづく



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