「日曜日のある朝、わたしのところに荷物が届いた。それは行方不明になっているわたしの友人トーマス・オラムの手記だった。その手記をこれから公開しよう。」
デザイナー マイク・ポンドスミス
という出だしで始まるスチームRPGがキャッスル・ファルケンシュタインです。ルールブック自体がその友人トーマス・オラムからの手記という体裁になっているというストーリー調のものなんですねえ。グラフィックも力が入っているし、なかなか雰囲気がグッドです。1994 年に R.Talsorian Games というところが出しました。
トーマス・オラムは現実のヨーロッパとはちょっと違うパラレルワールド、19世紀の「ニューヨーロッパ」というところに魔法で連れてこられたのです。彼を拉致したのは「バイエルン王国」の宮廷魔術師モロランと、彼に協力する妖精王オーベロンでした。彼らは窮地に陥ったバイエルンを救う人物を魔法で召喚しようとしていたのです。
ってなんだがのっけから飛ばした設定ですが、これは、まだ蒸気機関しかない19世紀末のヨーロッパを舞台としたRPGで、雰囲気としてはスチームパンクRPGのギアアンティークが似ているといえばにているかな。違うところは19世紀末の現実と虚構が入り交じっているところなんですが、これが面白いんですよ。
魔法、蒸気、オーバーテクノロジー、有名な小説の設定、19世紀ヨーロッパの政治、妖精など、虚構と現実が入り交じったごった煮の世界がこのRPGの魅力です。旧時代的な科学理論に基づいたメカとか、有名人物と会えるなんていうのが魅力かなあ。まとめると「結局なんでもあり」。分かりやすいコンセプトといえよう(笑)。
ルールはトーキョーN◎VAに似たというかパクリの、トランプを使ったシステムですが、システムはかなり癖があり使いにくい部分もあり好みが別れるでしょう。面白いのはワールドなのだあ!というわけでワールドのいい加減な紹介だあ。
主な登場人物ですが、シャーロックホームズ、ワトソン、モリアーティ教授、アルセーヌルパン(っていってもルパン3世カリオストロの城という感じがせんでもない)、ビスマルク、ナポレオン3世、ジュールヴェルヌ、ビクトリア女王、ツェッペリン伯、ルイスキャロル、ダーウィン、ドラキュラ伯爵、エジソン、ケルビン卿、フランケンシュタイン博士、マルクス、ネモ船長、マークトウェイン、うーん名前だけですごい。
R.Talsorian Games といえば元祖サイバーパンクRPG「サイバーパンク2.0.2.0.」を出しているところですが、「メクトンZ」「ボトムズ」「バブルガムクライシス」「Teenagers from Outer Space」等アニメ系RPGも数多く出しています。というわけで、19世紀末というわけでジュールヴェルヌの「海底2万マイル」かと思いきや「不思議の海のナディア」でNHKもびっくり、ということもあながち嘘ではないと思われるわけです。というかこのゲームそっちかい!と言いたげなところもちらほら(笑)。
さて、ニューヨーロッパの情勢の解説をしてみます。この時代、ドイツはまだ統一されておらず、南北に2分されています。南側が「バイエルン王国」で主にPCはこの国に所属します。
バイエルン国王ルードヴィッヒ二世は、現実の歴史では「狂王」といわれ、バイエルンがプロシアに併合されていく中、王の資格なしとして解任され変死するわけですが、この世界ではある理由から超聡明な賢王なのです。ちなみに「ファルケンシュタイン城(Castle Falkenstein)」というのはアルプスの麓にあるこのルードヴィッヒ二世の居城です。彼の重要な側近が宮廷魔術師モロランと妖精王オーベロンです。
妖精界はシーリーコートとアンシーリーコートという勢力が妖精界を二分しているのですが、そのシーリーコートの王がオーベロンです。簡単に言うとシーリーコートが人間と協力的な勢力で、アンシーリーコートが人間と敵対的な勢力。うーん、わかりやすい。
首都は美しい都ミュンヘン。バイエルンは空中船の強力な戦艦部隊を持っています。
ドイツの北側は強力な軍事国家「プロシア」です。この時代は、鉄宰相ビスマルクがすべてを仕切り、全ヨーロッパ統一を狙って活動しています。手始めにドイツ統一を目的としてバイエルンを併合しようとしています。非常に好戦的で、プロシアはバイエルンの仮想敵国となっているわけです。この国はランドフォートレスという、いわゆる蒸気戦車を所有しています。ビスマルクはアンシーリーコートと協力関係を結んでいます。
本当の歴史ではバイエルンは1870年にプロシアに併合されてしまうのですが、ここでは王がマトモということもあって?バイエルンは全然健在です。
フランスはナポレオン3世が治める第二帝制となっています。ナポレオン・ボナパルトならともかくナポレオン3世じゃ力弱いよなあ。というわけでフランスはいまいち強くないぞ〜というのが僕の見解。しかし科学大臣となっているジュール・ヴェルヌが彼の知恵袋として超兵器を作り出しているのだ。そのなかでもっとも有名なのが、強力な大陸弾道弾「ヴェルヌ砲」です。
イギリスはビクトリア女王の元、もっとも進んだ技術力でもって世界中に植民地を持ち世界最強の国力を誇っています。とはいえこの国力を維持するために国民に非常な犠牲を強いていると言われています。プロシアの友好国です。ニューヨーロッパにはあからさまな野望を打ち出してはいませんが、影からコントロールして主導権を握ろうとしているでしょう。ロンドンでモリアーティー教授がなにをしているか興味あるところです。
伝統のオーストリア・ハンガリー帝国は近年プロシアに押されています。軍は旧式で時代遅れの武装をしているためにかなり弱よわと考えられています。とはいえ首都ウィーンなどはさまざまな民族の人々が住む国際都市となっています。
ロシア帝国は1980年代のソ連に似た姿勢を示しています。秘密警察が幅をきかせ、巨大な軍隊を持ち領土的な野心をあらわにしています。最近クリミアを征服しました。ニューヨーロッパの他のすべての国を信用していません。また、ロシアの広く深い森には妖精達がたくさんおり、森妖精の王 Leshye が広大な地を独自に治めています。
アメリカは三つの国に別れています。南北戦争を終えたアメリカ合衆国はミシシッピー川以東を治めています。戦争の影響で国力は弱っています。西海岸は Bear Flag Empire (ベアフラッグ帝国)という帝国ができています。中央部はアメリカ原住民の Twenty Nations Confederation (二十国連邦)となっています。
このような黄金の蒸気時代の中でPCは宝、謎、陰謀、名誉、信念などをめぐって冒険を繰り広げることになります。
次に驚異の蒸気テクノロジーについて。というけで、きまくっている蒸気テクノロジーの数々だあ。
・蒸気一輪車
うむ。とにかくなんでもありか。というわけでやりましょうぜ。
おっと最後に、このゲーム 2000年に GURPS のサプリメント「GURPS Castle Falkenstein」として復活しました。まあ GURPS のルールとどれくらい合うか不明ですが、とにかくめでたい。