黒山羊館殺人事件

5月28日 2部 システム:Mage: The Ascension GM:小荒

 魔法は失われていなかった。現代まで密かに伝えられてきた魔法を操る覚醒者たち、それがメイジである。そんな魔法使いたちをプレイするRPG、Mage: The Ascension。しかしそんなことはあんまり関係なく、今回は探偵モノ。超絶推理能力を駆使するメイジ探偵たちが大活躍だ!

 マスターはミステリじゃないですって言ってるけど。

 まずは軽くMage: The Ascensionの解説。
 人間は意志の力によって世界の法則を変えることができる。しかし、現代では科学的価値観・懐疑主義が広まっているため、強い意志力を持つメイジといえどもおいそれと物理法則を破ることはできない。そのような魔法は破則魔法と呼ばれ反動も大きいため、メイジは偶然に見せかけた魔法(偶然魔法)をよく使う(同じ火の魔法でも、空中にいきなり火球を出すより、ガス管を爆発させる方が簡単なのだ)。

 また、メイジはそれぞれのスタイルに従って魔法を使う。伝統的な魔術師は杖を持って呪文を唱えるし、機械を使ったり踊ったり薬をキメたり音楽を聴いたりしてもいい。これによって不眠探偵や切腹探偵が再現可能となるのだ!
 ……多分マスターはそんな感じを狙ってるんだろうけど、JDCは話に聞いてるだけだから西尾維新リスペクトくらいで作ってみるか。
で、できあがったPCたちがこれ。

PC1:鷹宮羽衣(たかみやはごろも) オカルト探偵 PL:/うさぎ
つねに焦具の水晶玉を持ち歩く不思議少女。幽霊がお友達で日光浴好き。水晶玉からはソーラービームが出るらしい。一人称羽衣。

PC2:涅槃木無念(ねはんぎむねん) 殺し屋探偵 PL:katala
殺し屋だが同業者の犯行を明らかにする探偵でもある。空間操作・物体操作魔法を得意とし、密室殺人を作ったり暴いたり。

PC3:霧島破矢人(きりしまはやと) ネコミミ探偵 PL:組長
11歳だがすでにT大医学部を飛び級卒業した天才美少年医師。焦具の魔道書を読むことで未来や過去の事象を知る。生命操作魔法で自身にネコミミを生やしている。使い魔の黒猫パラケルススは口が悪い。

PC4:ダービータカラ ギャンブル探偵 PL:茨之介
確率操作魔法を駆使し、ギャンブルや投資で成した財を元手に設立したタカラファンドを副業としている。犯人を指し示すそのダイスから逃れることは不可能だが、一般人に対する説得力は全くないのが玉に瑕。


 この探偵たちが、それぞれ過去の事件で知り合った但馬豪ノ進という富豪(今までに数十回は殺人事件に巻き込まれ、いろんな探偵に助けられてきたらしい)からニュージーランドの別荘に招待されるところから事件は始まる。絶海の孤島に建つ黒山羊館というその別荘には、PCたちの他にも警視庁のエリート・橘隼人、神父ピエール=エルメ、ハードボイルド探偵・比嘉鉄二、超能力探偵・斉藤ユダが呼ばれていた。PCたちは以前共通の事件で知り合っていた(ということにした)ため、スムーズに黒山羊館までたどり着く。が、この黒山羊館、黒一色に塗られており、さらにはどこにも窓が見当たらないという異様な建物。玄関の扉の前にいた豪ノ進の娘、由美(10)は着物に手鞠を持ち、意味ありげな事を呟く電波系というコンボにびびるプレイヤーたち。

 ひとまず霧島が自分の未来を見てみると、黒ずくめの人間に拉致される自分、杭に貫かれたような穴だらけの死体となった自分を見てしまう。PCたちはお互いメイジであることを承知しているため、霧島は他のPCにこの事を告げ注意を促す。とりあえず他の招待客を探り、橘=おそらく普通のエリート刑事 ピエール=訓練を受けた雰囲気。メイジかも? ユダ=超能力者というより手品師系芸人、程度のことが分かる(プレイヤー的には、ユダが手品に見せかけた偶然魔法を使うメイジかもとは思った)。比嘉は部屋に引きこもり接触できず。他にも舘には両親と娘の但馬一家に加え、執事の丸山、メイド長の麻生、双子メイドの一江と双葉、使用人大作、料理人黒河などがいたが、時間的に調べきれない。

 そうこうしているうちに晩餐。但馬の妻、絵美子が姿を見せないのが気にかかったが、但馬は気にしてないらしい。探偵マニアの但馬は、この場に集まった人間で推理ゲームを行うことを宣言。しかし、未来を知ってしまっているPCたちは微妙な表情を浮かべるしかない。晩餐がお開きとなり、夜も更ける頃には天気予報を裏切る大嵐。もとから電話線がないことに加え、ますますクローズドサークル(物理的に外部から途絶している舞台)の様相を呈してくる。

 翌朝、朝食に但馬と比嘉が現れない。調べてみると、比嘉は行方不明。案の定というかなんというか、但馬は自室で殺されていた。早速それぞれの超推理(魔法とも言う)を発揮するPCたち。霧島は今朝方黒ずくめの人間に但馬が刺殺される過去を見る。タカラは但馬の部屋に魔法の痕跡を感知し、それが厨房で不自然に途切れていることを突き止める。羽衣は冥界に赴き但馬に直接話を聞こうとするが、あろうことか但馬豪ノ進は死んでいない、あの島で昨夜から今朝死んだ者は誰もいない、と冥界の番人に言われてしまう。おお、ミステリーだ。
 「時間操作魔法で未来から死体が送られてきた説」「島にいる野生の山羊と但馬が魂を入れ替えられている説」と次々にトンデモ推理を繰り広げるPCたち(笑)。しかし魔法の可能性を考えると一向に埒が開かないため、仕方なく今まで名前が出た人間のリストを作り、ダービータカラのダイスに聞いてみることにする(笑)。ダイスが指し示したのは料理人の黒河。確かに厨房は怪しかった、ということで、他の人間が比嘉を重要参考人として捜索する一方、PCたちは黒河の裏を洗うことに。霧島の過去視によって以前の料理人は厨房で不審死しており、半年前から黒河が来たこと、昨夜厨房を出る際、黒河が奇妙な仕草(魔法の痕跡を消している?)をしてから但馬の私室の方に向かったことが分かったが、それ以上は何も出ない。

 結局大したことが分からぬまま夜となり、エリート橘が船に乗って本土に救援を求めることを提案。執事の丸山と乗り込み、エンジンを掛けたとたん、どかーん。海に投げ出された二人を何とか魔法を使って助けるも、意識不明の重体。焦ったPCたちは黒河を問い詰め誘導尋問にかけることにする。俺たちゃメイジだ、だから全部分かってるんだよ、と暴露戦術しつつハッタリをかましたところで、突如銃声。部屋の外に出ると、銃を構えたピエールと黒ずくめの人間が対峙している。霧島の話で黒ずくめ=ヤバいと刷り込まれていたPCたちは、逃げだそうとした黒ずくめを魔法を使って捕まえる。覆面の下の顔は双子メイドの片割れ。早速尋問しようとしたところに絵美子夫人が現れ、事態を全部説明してくれるという。この場に黒河がいないことに気づいたPCたちは二手に分かれ、涅槃木が黒河を追い、他の三人(とピエール、ユダ)が絵美子について行くことに。

 絵美子の部屋から階段を下り、地下へと案内される五人。薄暗い地下室はどことなく宇宙っぽい機械に溢れていた。人間の脳やら双子メイドの体が浮いたポッドの前で絵美子は真相を滔々と語ってくれる。そう、今回の招待は探偵という優秀な頭脳の持ち主を集めるための罠だったのだ! オリジナルの但馬は五十年前に死んでおり、今朝死んだのは人造生命体(=魂がない)に過ぎなかった。そして双子メイドは双子ではなく量産型のクローンメイドだった!
  ああ……やっぱりミステリじゃなかった……。
 冥土の土産に真相を教えてくれた絵美子(宇宙人)はクローンメイドや同じく人造生命体の使用人大作などを繰り出し、自らもレーザーガンを持って探偵たちを脳味噌にせんと襲いかかってくる。PC三人も魔法で対抗するも、如何せんクローンメイド部隊の物量に押され一時撤退。ピエールがユダの動きを魔法で止め、人身御供にして何とか地上に逃れたものの、地下からは大量のクローンメイドが押し寄せてくる!

 一方。黒河を追った涅槃木と霧島の使い魔パラケルススは、双子メイドと交戦している黒河を発見。霧島と感覚を共有しているパラケルススは地下で知ったメイドの正体を涅槃木に伝え、涅槃木は黒河に協力することにする。ところが人外メイドに一向にダメージが通らず、ここでも黒河と共に撤退、近くの迷路(屋敷の中にある)に逃げ込む。とりあえず先程聞き逃した黒河の事情を問いただしてみると、黒河はメイジを世界の秩序を乱す者として忌み嫌うハンターと呼ばれる人種であることが判明。但馬(実は絵美子)の陰謀を嗅ぎつけ、阻止するためにやってきて但馬を殺したらしい。なるほど、だったら協力する目も――
 「騒ぎが大きくなりすぎたな。仕方ない、お前の首でも手土産にして脱出するか」
 えー? 何もこんな敵地のど真ん中で殺し合いしなくてもいいじゃん。しかしこっちも殺し屋探偵。挑まれたんだから受けてやるか。この場で口先弄して仲間にしても、後々めんどくさそうだし。
 GM「じゃあ、戦闘技能一回振りで」
 ええーっ!? くそ、マスターめ、死んだら死んだで絵美子に復活させるというおもしろ展開を狙ってやがるな。負けるかー。
 GM「あ、目が悪い」
 ふう。黒河を即殺し、殺し屋探偵の面目躍如。と、いきなり迷路の奥から由美が登場。絵美子があんなだった以上、由美がまともなはずもなく。腹を減らしているらしく、なにか食べ物を見るような目を向けてくる。由美はこの島に溢れてる山羊も食べ飽きているらしく、今死んだばかりの黒河の死体で何とか納得させ(非道い)、外のメイドに見つからないように迷路から出してもらう。

 さらに一方。メイドたちから逃げる羽衣、霧島、タカラ、ピエールの四人は、厨房に寄ってガスを充満させ、魔法で時限発火を仕掛ける小細工を弄しつつ、舘からの脱出を計る。温室の宇宙植物に行く手を阻まれるも、魔法で壁を破り何とか外に出る。涅槃木とも合流し、ひとまず舘から離れ島の奥に潜伏することにする。適当な洞窟を見つけ、そこで色々と脱出プランを練る。羽衣の魔法で一時異界に避難、霧島の魔法でエラや翼を生やす、涅槃木の魔法で直接テレポート、といくつか案が出るが、魔法の効果を他人に及ぼすには余分な達成値が必要なため、どれも実力不足。結局各々が自分の得意魔法で逃げる方がいいのではという結論に。しかし、それだと逃げるのに使えるような魔法を持たないダービータカラが取り残されるため(笑)、最終的に涅槃木がニュージーランド本島までテレポート→助けを呼んでくる、という計画に。が、肝心なところで達成値が足りず、ニュージーランド1km前にして海にドボン。なんとか泳ぎ切ったが、上陸したところで力尽きて気絶してしまう。
 島に残った三人はメイド部隊の山狩りから必死に逃れていた。しかし由美にあっさり嗅ぎつけられてしまう。どうにかして懐柔しようと策を練るPCたち。結局食い物だろう、ということでそこらへんの山羊を捕まえ、霧島の生命操作、羽衣の異界魔法を組み合わせて由美が食べたことないような山羊を作ってみることにする(笑)。この判定のダイス目が走り、見たらSANチェックが必要そうな山羊が完成。由美も興味津々。ずっとこの島にいてこれを作ってよ、とまで言われる由美のお気に入りっぷりに、霧島が一発逆転を狙った説得を開始。
 「ニュージーランドにはこれなんて目じゃないくらい美味しい物がいっぱいあるんだよー」
 これが功を奏し、巨大な羽付き二足歩行の山羊に変身した由美はPCたちとピエールを背中に乗せ、ニュージーランドまで送ってくれた。到着するや四人は急いで由美と別れ、由美対策のため現地のメイジに協力を仰ぐ(笑)。メイジたちに連絡が行き渡るまでの一週間(そのころには涅槃木も復活)、ニュージーランドでは各地でキャトルミューティーレーションやヒューマンミューティーレーションが多発。一週間後の夜、UFOが目撃されてそれが飛び去った後には、山羊の姿の怪物は影も形もなく、ミューティーレーションもぱったりと起こらなくなった。勝手に事態が収束してしまい、PCたちに残されたのは集まったメイジに対する事情説明。もちろん黒山羊館での事件をほとんど伏せ、単に化け物を目撃した善意の第三者として通したのだった。めでたしめでたし。
セッションレポート > MAGE | comments (1)

Comments

左馬 | 2005/06/08 15:28
ぶははは!
探偵たちもアレだが、真相にはもっと大爆笑。
確かにミステリじゃない。つーかメイジでもない?
地下室で脳みそうんぬんのくだりは、
以前PACさんが書いた学パラシナリオフックのネタを連想してしまった。
いや、ぜんぜん別物だけどね。

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