RPGシステム紹介

日本的幻想遊戯 平安夜曲

其の一 概要

文責:val

■はじめに

 「日本的幻想遊戯 平安夜曲」は平安時代を舞台とした同人RPGです。

 去年の冬コミ(コミック・マーケット61)で見つけて購入したのですが、同人RPGとしてはかなりできが良く、市販のRPGにひけを取らないものでした。当サークルでも何回かセッションが行われ、好評だったので、ここで簡単に紹介してみたいと思います。

■世界観

 みなさんは「陰陽師」をご存じでしょうか。安倍晴明が源博雅と陰陽術を使って活躍するあれです。夢枕獏が小説で書き、岡野令子が漫画化し、映画やTVドラマ化され、関連本もいろいろと出版されるほどのブームになっています。
 物の怪や魑魅魍魎が跳梁し、陰陽師は魔法ともいえる陰陽術を使いこなす。貴族たちは占いを信じて、物忌みや方違えをし、悪いことが起きると加持祈祷で良くなるように祈る。
 平安時代はそのような神秘が人々の生活の中にしっかりと入り込んでいた時代でした。

 また、平安時代といえば「源氏物語」などの中で書かれているように、貴族文化が栄えた時代でもあります。貴族たちは和歌を詠んだりしつつ、噂でしか聞けない姫に恋をしたりしたものでした。

 平安夜曲の世界観は、このような陰陽師や源氏物語などを基本として形作られています。  この世界では、物の怪は実際にいて人々に悪さをしますし、登場するキャラクターたちは陰陽道や神道、密教道などの魔法も使います。実際の平安時代よりも少しファンタジックな世界になっています。

 そんな世界の中で、PC(プレーヤー・キャラクター)たちは殿上人となり、悪さをする物の怪を退治したり、貴族の姫君と恋をしたり、他の貴族たちと権力を争ったりと様々な冒険をすることになるでしょう。

■システム

 さて、このゲームのシステムですが、D6(6面体ダイス)をいくつか振るだけという簡単なものになっています。

 詳細なシステム解説は別項を見てもらうこととして、ここでは簡単にこのゲームの特徴的なシステムをいくつかあげておきます。

○キャラクター作成時の家柄決定と年功序列

 平安夜曲ではキャラクター作成の最初に家柄(家系)を決めます。
 平安貴族、それも上流貴族にとっては家柄は非常に大切でした。家柄によってある程度将来が決まったからです。
 このゲームにおいても家柄を決めると、位階やつける官職などがある程度限定されます。また家柄や官職によって、取れる技能も限定されてきます。
 家柄の決定は慎重に行った方がいいでしょう。

 また、行為判定の時や戦闘時の行動順は位階の高い方が優先されます。位階が同じであれば年齢が高い方が優先されます。

○吉凶システム

 もう1つ、特徴的なシステムは吉凶システムです。その日が吉日が厄日であるかをダイスで決めて、吉日であれば吉数を、厄日であれば凶数を決めます。そして、行為判定の時の最高の出目が吉数であれば決定的成功に、凶数であれば決定的な失敗になります。
 つまり、吉日なら普通なら失敗の出目でも決定的成功になる可能性があるのに対して、厄日では成功になるはずの出目でも決定的な失敗になることがあるということなのです。

※厄日の場合、能力値が高くて凶数も高いと、能力値が低いキャラクターよりも高いキャラクターの方が、失敗する確率が増えるという逆転現象が起きるのですが、このあたりの詳しいことは別項にまとめましたので、興味のある方はそちらの方を参照してください。

■ルールブック

 実は、このルールブックを購入する動機の1つに装丁の美しさがありました。カバーは和紙を使った凝ったものになっており、綺麗なデザインにまとまっています。

 ルールブック本体もは300ページ近くにもなる厚いものであるにもかかわらず、よくまとまっており、例もたくさん載っているので、わかりやすく親切な構成になっています。
 特に後ろにまとまったチャート集があるのは、基本とはいえ、実際にプレイする時にはありがたい構成です。(最近のRPGの中には、どこを参照すればよいのか、すぐにはわからないものもありますからね)
 また、資料も充実しており、イラストもふんだんに入っていて、プレイに必要な平安時代の貴族とその生活の様子などがよくわかるようになっています。

■おわりに

 最後に1つ難点を言わせてもらえば、PCが殿上人しかできないということがあります。
 貴族の女性は外出することがほとんどできなかったので、ある程度仕方がないですが、せめて僧侶や殿上人以外の貴族などは出来るようにして欲しかったところです。高位の僧は内裏に出入りすることもありますし、貴族の随身なんかができるとシナリオの幅が広がって面白いのではないかと思います。

 とはいえ、全体的な出来はかなりいいものになっています。
 システムもシンプルで遊びやすいですし、資料も充実しているし、サンプルシナリオもついているので、ルールブック1冊あればすぐにでも遊び始めることが出来ます。これだけちゃんと遊べて、綺麗なルールブックで、3,800円という市販のRPGよりも安い価格設定なので、買う価値は十分あるのではないかと思います。
 平安時代や陰陽師などに興味のある方は一度やってみてはいかがでしょうか。



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