第4話「折れた『紅』と陰陽寮の妖怪殲滅作戦」


●仁の夢●
 霞の中を漂うような夢である。しかし、霞の中を歩くたびに、仁は体を削られるような痛みを感じる。どうやらこの霧に力を奪われているらしい。
霞の中に何かが見え、近づいてみると真っ赤な鬼が鎖に繋がれているのを見つける。どうやら、これが妖刀「紅」の元になった鬼、緋炎らしい。緋炎も、仁同様、力を奪い取られているようである。

 緋炎に話しかけようとしたとき、一人の老人が現れる。この老人が刀の中から語りかけていた声の主、御影らしい。仁に交渉を持ちかけようとするが、何しろ「殺せ」と語りかけてきたり、「体をよこせ」と言ってきた相手である。全く聞く耳を持たない仁に、御影は術をかけて身動きをとれなくした上で始末してしまおうとする。

 そこへどこからか仁に呼びかけてくる皆の声が聞こえ、動けるようになった仁は刀をとって反撃に出る。御影も刀で応じ、互いに「紅」に似た剣を手に戦う二人。
だが、仁は御影ではなく緋炎を繋ぐ鎖に斬りかかる。そこを後ろから斬りかかられ、仁は大ダメージを負う(回避ファブル+攻撃クリティカル)が、それでも仁は緋炎の解放を優先する。

鎖から解き放たれた緋炎も仁に加勢し状況は有利となるが、御影も強く、戦闘は決着がつかない。最後は踏み込みを誤って自傷した御影に仁がとどめを刺して勝負が決し、紅の中から御影が消滅する。

 改めて緋炎と言葉を交わす仁だが、緋炎の消耗は激しく、御影がいなくなった今では刀を維持することができないのではないかという。緋炎は外から呼びかけている神無のことを仁に頼み、仁は意識を取り戻すことができた。
●折れた「紅」●
 仁が目を覚ますと、「紅」はやはり二つに折れてしまっている。唯一の救いは、刀から感じられていた妖気がなくなっていることである。
 目を覚ました仁とその父:晃は言葉を交わすが、母親が死んで以来あまり顔を合わせていないこともあり、互いに敬語で話すなど、きわめて他人行儀である。

 朱宮は大僧正:瞬陽にやはりどこかから人柱を都合する必要があると提案し、瞬陽も志願者を集め始めることに同意する。この場で様子を見ていた九条もつてを伝って「紅」の制作にたずさわった僧:端地を探してくれることとなり、この場を後にする。

 狐のカグヤは刀が折れたことを陰陽寮に注進するための人目を忍ぶが、晃に呼び止められる。陰陽寮を探っている晃はカグヤが陰陽寮から来ていることを知っているが、カグヤの妹が陰陽寮に押さえられていることも知っており、あまり敵対的ではない。互いに情報を交換することをそれとなく約束して別れる二人であった。

 オロチの封印を確かめに行っていた亜里紗達が帰ってくるが、刀が折れたことを知ると、彼女は「紅」が折れたのは仁がふがいないせいであるといって怒り始める。さらに、「紅」を接ぐために生け贄を探しているという話を聞いて、そのような外法のものであれば「紅」は必要がないと説く。
しかし、元々裏社会の存在として戦ってきた朱宮は外法も時には必要と正論を一蹴。「自ら志願するものがあれば」ということでPCの意見はまとまる。

 「紅」修復の方法を探している間、各人の用件を片づけるPC達。仁は未だ視力の回復しない眞子に会いに行ったり、サトリに会いに妖怪夜間学校に授業参観に行ったりする。

妻にそっくりの女を敵方に囚われている朱宮は、彼女が生きているのか死体なのかを調べるために赤外線サーモグラフィーを調達。

前回のデモ騒ぎで夜間学校での教え子を拘束されたカグヤはその後の様子を調べる。生徒は無事に戻ってきているが、それを機会に妖怪の存在が再び社会問題となっていることと、子供の誘拐事件が多発していることが分かる。PC達は子供の誘拐事件を気にするが、広範囲に発生するため手のつけようがない。
●人柱探し●
 そんな中、待機している誠二の元に彼の父である稔が訪ねてくる。稔は「紅」修復のための人柱に立候補したことを誠二に告げに来たのである。
「息子が最前線でがんばっている以上、親の私が坐して見ているわけにはいかない」
とのこと。しばしの沈黙の後、誠二の発した言葉は
「このような父を持って名誉に思います」。
恐るべし。

 そうしているうちに端地の居所が分かり、PC達は嵐山にいる彼女の家を訪ねる。偽名を名乗って生活していた彼女の家に行き、外法に関わることを躊躇する彼女に「紅」が折れたことを伝えて助力を請うた。

端地の見立てによると、「紅」の損傷は大きく、接ぐためには人間で4,5人分、妖怪で2,3人分の魂が必要らしい。ただし、緋炎に縁の深いものなら少なくてすむという彼女の言葉に、恩を返すことにこだわっている神無が自分が人柱に立つと申し出るが、とりあえず皆で思いとどまらせ対策を練ることにした。
●大宴会●
 とりあえず刀の本来の魂である緋炎の消耗が激しいことが問題であるということで、緋炎がなるべく力を取り戻すように何らかの儀式をしようということになった。

儀式として何が適当かということになり、「生き血を垂らす」などという意見も出たが、なるべく邪気のたまらない方法ということで、結局「三日三晩の大宴会」という一見荒唐無稽な案が(リスクが小さいだろうということで)実行に移されることとなった。

 やはり緋炎の兄、轟雷一党のところでするのが適切だろうということになり、鞍馬山の妖怪達のところへ行くこととなった。「宴会の効能」については妖怪の頭領:繰和も「あるかもしれない」と述べるにとどまったが、「あるかもしれないなら」と計画を決行する。しかし、最近鞍馬山に散発的に現れていた陰陽寮の連中がこのところ姿を見せなくなった、というきな臭い情報も聞こえてくる。
 それはともかく、PC達は聖光霊宗から大量の酒を徴発、綺麗どころの妖怪も徴用して宴会の準備を進める。狐のカグヤは「コンパニオン要員」として、変化して酒を注いで回ることになった。

「未成年だから」という理由で宴会を辞退しようとする仁も、「これは儀式だから」「そもそも刀の使い手がいなくては始まらない」ということで座の中心で轟雷と酒を飲み交わすことに。

 夜も明けて悪酔いしている仁を病院送りにすべきか検討している頃、陰陽寮が気になるカグヤはあたりを調べて回り始め、他のPC達も彼女に頼まれて捜索を始める。その結果、近くの森の木陰に妖怪封じの符が張ってあることに気づく。全員で周囲を捜索するとほかにも貼られていることが分かったため、鞍馬山の妖怪達に知らせて皆で山狩りをすることになった。総勢でかなりの量の符を回収したが、これで陰陽寮の動きはさらに怪しくなった。

 しかし、紅は一晩の宴会では「ほろ酔い加減」と診断されたため、それでも宴会は続行されることとなった。陰陽寮が怪しい動きをしていることで様子を見に来た亜里紗も宴会要員として徴用される。当初は文句のありそうな様子の亜里紗であったが、結局そのまま宴会に参加し、轟雷をはじめとする鬼達と結構うち解けることとなる。
●妖怪殲滅作戦●
 PC達が飲み過ぎないように注意しながら宴会を続けていると、周囲で戦闘の音が聞こえ始め、PC達の前には犬飼が部下を連れて現れた。部下の中には前回轟雷一党のねぐらを襲った三人組(佐々、狩野、五十鈴)の姿もある。

 首魁と思われる犬養に何のつもりか尋ねると「妖怪を根絶やしにするため」との返事である。オロチを倒すために妖怪や聖光霊宗の助けが必要なはずではないかとPC達が尋ねると、アーパー系の五十鈴がかつてオロチを倒した十握の剣とオロチの尾から出てきた草薙の剣があるので助力は必要ない、と答える。
かつて陰陽寮が独走して失敗したのではないかと反駁すると、これらの剣はそのときには用意していなかったということが分かる。

 変化して姿を変えていたカグヤはなんとか犬養に気づかれまいとするがあっさりとばれてしまい、返答する際に思わず名前をいってしまったために犬養と関係があることもPC達にばれてしまう。
犬養の妖怪全殺論に覚悟を決めたカグヤは犬養を殺して妹を取り戻すことを決め、犬養に躍りかかる。

 首魁の犬養はそのままの流れでカグヤが相手し、三人組の一人である骨法使いの狩野は亜里紗と轟雷が肩を並べて相手する。「紅」のない仁はが呼び出した「プロレスラー風の何か」(蟲術の改良版)を相手することになる。

 犬養の「毎回反撃してくる抜刀術」や手下の「ダメージ反射護符」などに苦戦するが、PC側の充実した後方支援が功を奏し戦闘は互角に展開する。ついには犬養の剣がファンブルで折れ、全体の流れは決した。逃走しようとした残りの手下も朱宮の「即死技」(といっても、ルール上死亡ではなく瀕死)で撃ち倒され、全員捕縛される。

 ほかの場所でも、被害はともかく妖怪側が勝利している様子である。

 戦闘後、妹を人質に取られている事情を話したカグヤは他PCの協力を得て陰陽寮の本部に乗り込むが、そこはもぬけの殻である。陰陽寮内の少数派であった三倉には会うことができたが、どうやら彼も組織から切り捨てられた様子である。

陰陽寮は今回の決起に際して、少数派を切り捨てて本拠を移動したようであり、おそらくカグヤの妹ヒスイもそこへ移動させられているのであろうということになる。
 妹を心配するカグヤに、いざとなれば人質交換もできるだろうと慰めるPC達だった。
●第4回おまけ●
 途中で妹の様子を見に行ったカグヤはヒスイが犬養に見事にて名付けられているのを見てショックを受け、その日の授業内容は「不純異性交遊はいかん」。

 最終戦闘前、犬養の「妖怪皆殺し発言」を聞いたとき朱宮PLは「今のを録音していたことにならないのか」と入れ知恵、ヒスイを説得する日のため、カグヤPCが命運1ポイントを払って「実は録音していました」と言うことにした。「予算説明用に宴会の様子を録画しておくことにすればよかった(笑)」

 亜里紗と肩を並べて戦う轟雷、どう見ても亜里紗の方が強い?神無を剣を接ぐための人柱にするぐらいなら轟雷を人柱にした方がいいだろう。名付けて「兄弟合体」。次の鬼の頭領は轟雷より強かった亜里紗で、という与太話。

 ダメージ反射護符は「一人一枚」。味方のダメージ増強呪文が効き過ぎて反射が怖い仁はおもむろに「じゃあ、素手で殴ります」。まぁ、このゲーム、剣術も「格闘」の一種なので…。

 フェンシング技で犬養を倒したカグヤ。ルール上そのままでは「瀕死」なので積年の恨みを込めそのまま二段技でとどめを刺そうとするが技の発動に失敗。「既に倒れていたことに気づかなかった」ととりあえず言い訳。人質交換に使うなら、結局は生きていて幸運か。

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