第四回

1.苦境 
 プルトニオス率いるシラクサが宿敵カルタゴ、エジプト両海軍を辛くも打ち破り、PC達が安堵したのも束の間。シラクサの盟友ローマが、山越えをしてきたハンニバル率いるカルタゴ軍に敗北、ローマ軍は壊滅したという報が伝えられる。

 このまま勢いに乗り、アフリカ北岸のカルタゴ本国を攻略しようと考えていたプルトニオスらにとって、イタリア半島でのローマの敗北は後背を突かれた形となる。大勝利から一転、南北から追いつめられたシラクサは、これからの戦略に頭を悩ませることになる…。

 といった情勢の中で農閑期が終わり(古代では農閑期にしか戦争をしないのだ)、次の農閑期までの休戦期間となる。カルタゴ、エジプトとの連戦で戦力も消耗し、国土も荒れたシラクサは体勢を立て直すことに専念する。

 他にはアルキメデスの発明したソーラ・システム(多くの鏡で光を集めて炎上させる兵器)、起重機(フックに引っ掛けて船を転覆させる兵器)をシラクサ市の城壁に配備して、防衛力を上げたりしておく。最新式装備(というよりオーバー・テクノロジー)に固められたシラクサは古代地中海世界でも最強クラスの砦となっただろう。

 次の農閑期が迫るころ。情報収集の結果明らかになった情勢は、PC達シラクサにとって非常に危険なものであった。

2.作戦会議
 世界情勢は以下のような感じである。

・シラクサ(PC達)…1.5万+シリア1万
 頼りの北の同盟国ローマが惨敗し、北のハンニバルの脅威を感じるPC達。折角追いつめたカルタゴ本国の海軍力が復活する前に、本国を攻略したいが…。

・ローマ…4〜5万
 壊滅的被害を受けたローマは、ローマ市に籠もって何とか本市の陥落だけは防ごうという状態。

・カルタゴ(ハンニバル)…5万&別働隊2万
(カルタゴ兵3万+蛮族ガリア人2万)
 ローマを一戦のもとに破ったハンニバル率いるカルタゴ軍は、ローマ牽制用の別動隊を残して南下。現在はイタリアの長靴の、くるぶしの辺りにいるらしい。

・カルタゴ(本国)…1万
 自慢の海軍を失ったカルタゴは、政変によりハンニバルの父、名将ハミルカルに権力が委譲された。しかし戦力の損耗は否めず、じっと守りに入っている。

・ギリシア…3万
 ローマとカルタゴの争乱に介入して利益を狙うギリシアは、無傷のままイタリア半島南部に駐留。彼らがローマに敵するかカルタゴに敵するか。鍵を握る存在、いわば「special」である。

・エジプト…公称10万
 シラクサ軍師アナクゼオンの宿敵、狂信的神官リスタルキス率いるエジプト軍は、先日、何処かへ向けて出撃したらしい。その数は公称10万(恐らく実数は半数以下だろうが)。が、連中がどこを攻撃するのかは不明。不気味な一軍である。

 ここでPC達は軍議に入る。

 PC達に、仇敵カルタゴや、アナクゼオンの個人的宿敵エジプトと話し合うつもりはない。また、エジプトの動きは不明のため、一応判断の外に置くことにする。自然と戦略は、ギリシアを何とかしてハンニバルとぶつからせるプランを中心に考えられることとなった。
その際、焦点はギリシアをどう説得するかと、PC達が戦うのはハンニバルなのかカルタゴ本国なのか、である。

 PC達シラクサとしては、ローマやギリシアがハンニバルを抑えている間にカルタゴ本国を独力で取ってしまうのが一番おいしい戦略である。ただこの場合、ギリシアを味方に引き込むカードがない。明白にシラクサが独りで得をするプランだからである。最悪、ギリシア&カルタゴの本国・ハンニバル軍全部にシラクサだけで相手する、という結果もありうる計画である。

 しかしローマ&ギリシア&シラクサ連合軍でハンニバルを叩く、というプランでは、おそらくハンニバルの戦力が削れた時点でローマとギリシアの内乱が勃発、泥沼のイタリア半島抗争でシラクサは退くに退けなくなる、という未来が見える。シラクサには一文の得にもならない可能性も高い。

 その時、ギリシア側から「兵を貸せ」という使者が。ここでプルトニオスは、やはり一番危険と見えるハンニバルを連合軍で叩くのが最善と判断する。ここでプルトニオスの妻の実家、シリアの軍は、イタリアの争いに介入するつもりはない、とエジプトの拠点攻撃へ向かっていった。あまり予期していなかった、痛い戦力ダウンである。

3.民主主義は辛いよ
  ローマ・ギリシア・シラクサ連合軍とはいうものの、途中でギリシアに裏切られては元も子もない。バルトロマイオス&エレオノスはローマに向かい、ギリシアへの戦後の南イタリアの割譲を約束させようとする。

 が、問題が起きる。ローマの司令官、正直モノの民衆派武人マルケルス君は、個人的には割譲も止むをえまいと判断した。が、それでは強いローマに慣れすぎている ローマ市民は納得しないだろう、と言う。市民の支持でトップに立っている彼では、割譲の約束は公表できないし、明文化もできない、と語る。

 ※全く、古代世界の話とは思えない・・・。

 さらに、消息不明であったエジプト軍が突如あらわれ、漁夫の利とばかりにカルタゴ本国に攻撃をかけているらしいことが報告される。

 これを受けてPC達は再び軍議。

 結局、シラクサがハンニバルと戦うプランは捨て、シラクサはカルタゴ本国とエジプトの戦いに更なる漁夫の利を狙い、ギリシアはローマと共にイタリア半島でハンニバルと戦って貰うという計画に移行。以前に仕入れていたエジプト産の麻薬をギリシアからの使者に使い、そのようなシラクサに都合のいいプランを了承させる。

 ギリシアには、シラクサがカルタゴ領サルディニアを献上して、ローマと協力してハンニバルと戦ってもらうことにする。多少無理が出る部分はギリシア王に対しての、美少年エレオノスを使った『美人の計』で押し切ろうということに(結局必要なかったが)。

 シチリア・マフィアは麻薬・色仕掛け、なんでもやるのであった(笑)。

4.無神論者アナクゼオン 対  狂信的神官リスタルキス
 遂に方針の決定したシラクサ軍は、まずは手始めにカルタゴ領サルディニアを占領。その後、アフリカ北岸はカルタゴ本国に向かった。カルタゴ本国ではエジプトの大軍に対し、名将ハミルカルは防戦一方である。「弱い方と結んで、強い方と戦う」のは戦略の基本である。上陸したシラクサ軍は、ひとまずカルタゴと結び、エジプト軍の補給線を立つ戦術に出る。そして、それを阻むエジプト軍と交戦。

 敵将はエジプトの狂的神官リスタルキス、無神論者アナクゼオンの宿敵である。
「我らが神敵、覚悟せい!」
と攻め寄せるエジプト軍の狂信的雰囲気に気圧されたか、ここでシラクサ軍は思いの外苦戦する(数的には劣勢なので当然とも言える)。

 何か逆転の奇策を練るも、軍師アナクゼオンに浮かぶ策は一つしかなかった…。

 「ハッハッハ、君はまだ神などと、そんな非文明的なものを信じているのかね」

 挑発によりおびき出したリスタルキスとの、文人同士の一騎討ちである。斬り合いの末、「健全な肉体に健全な精神の宿る(?)」哲学者の勝利であった。醜くも逃げ出したリスタルキスは、後にシラクサ軍の兵に捉えられ、アナクゼオンによって首を刎ねられることになる。

 宗教的支えを失ったエジプト軍は四散。残るはハミルカル率いるカルタゴ軍である。

5.英雄色を好む?
  ハミルカル将軍には一度勝利しているとはいえ、鉄壁のカルタゴ市に立て籠もるカルタゴ軍は厄介である。結局、シリア軍とも合流したPC達は「カルタゴ市民を巻き込みたくない」などと理由をつけて敵軍を市外におびき出し、包囲殲滅戦を行う。が、本当に健全な精神には勝てなかったか、策は見破られており、包囲したところを更に後ろから攻撃を受けて乱戦となる。

 しかし、やはりハミルカルは一度敗北している将だった。最終的には押し切られ、カルタゴ軍は打ち倒される。が、ハミルカルもこれだけでは終わらなかった。第十一計、『李、桃にかわって僵れる』である。命に代えて、プルトニオスだけでも殺そうという策である。

 ここで、ギリシア王に対して使用せずに残しておいた『美人の計』を使えるか聞いた所、GMが許可。

★結果の演出。
 敗北が決まった瞬間、敗戦の将ハミルカルは単騎、プルトニオス目掛けて突進する。命を賭けて、敵将だけでも討たんとする悲壮な特攻である。そこに、突如現れる黒人の美少女。ちら。一瞬、彼女に目を奪われたハミルカルは、プルトニオスの放った矢に貫かれて即死した。
・・・何とも哀れな死に様であった。

 PC達は、仇敵であったカルタゴ本国を遂に打ち倒し、カルタゴ市に入城する。だが、その心は晴れやかではない。イタリア半島でのローマ&ギリシア連合軍対ハンニバル軍の情勢が気になるからである。

 そして戦後処理をする間も殆どなく。北からの情報が届く。
 ローマがハンニバルの別働隊に当たっている間に、ギリシア軍3万、壊滅。ギリシア王さえ生死不明とのことであった。そして、ハンニバルは変わらず南進を続けているらしい。

 ギリシアが裏切らなかった、という点だけでは安心したPC達であったが、5万から兵力すら失っていないというハンニバル軍に改めて戦慄を覚える。そして、南下を続けるハンニバルは、今頃シラクサに到着、攻撃している頃であろう・・・。


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