最終回

1.海上にて
 シラクサが攻撃を受けているとの報告を受け、戦後処理もそこそこにPC達は海路シチリアを目指した。途中、気になる報告が。前回討ち果たし、カルタゴ本市に晒していたはずのエジプト神官リスタルキスの首が消えた、というのである。とはいえ、現状で出来る事はなく、この件は放置された。

 そんなことがあってから数日、シラクサが遠望できる位置までたどり着くと、シラクサは既に炎上していた。そして、PC達の軍に近付いてくるボロボロの船団が。警戒するPC達だったが、これはシラクサからどうにか脱出してきた留守番部隊だった。

 急いで合流、話を聞くPC達。それによると、副官ウラニオスとアンティア姫はどうにか脱出したが、先王(正確には僭主だが)の遺児ヒエロニュモスは行方不明である。ハンニバル軍は前回の戦闘でギリシアから奪った「ギリシアの火」なる兵器を使用しているらしい。何でも油のような物で、水中でも燃え続けるとか。

 ともかくこんな状態では戦どころではない。兵士と難民を休ませるべく、とりあえずリカータ市に寄港する事にした。(カターニャはカルタゴの別働隊が包囲していたために避けられた)

2.救出作戦
 リカータには特に混乱も無く入城し、ひとまず落ち着いたPC達。本拠地を取られていては示しがつかない(実際、シチリアの諸都市は日和見を決め込んでいる)ため、とりあえずは交渉によるシラクサの奪回を試みる。

 和平の使者が持ち帰った情報は、ハンニバルがヒエロニュモスを擁立して傀儡政権を立て、プルトニオスを「ヒエロニュモスが幼いのを良い事に専横を行った逆臣」として政治的に切り捨ててしまおうとしているというものだった。

 ここでPC達は作戦会議に入る。ヒエロニュモスを暗殺してしまう、という物騒な案も出たが、結局アナクゼオンが予め調べておいたシラクサ市の下水道(当時の都市は結構上下水道はしっかりしていた)からプルトニオス&エレオノスが潜入し、ヒエロニュモスを救出するプランに決定した。

 2人の出発と前後して、不気味な噂が流れる。リスタルキスの生首が闇夜に浮かんでいた、という目撃情報が流れたのだ。これに対して一応捜索を行った所、捜索部隊の一人が肌を紫色に変色させて死んでいるのが発見された。さらに、近くの地面にはよくわからないネバネバとした液体で「神の怒りを見よ」と神聖文字(ヒエログリフ)で書かれていた。

 一方、救出部隊。問題なく潜入は成功した。オリーブ漬けのハミルカルの首を正門から使者に届けさせるというアナクゼオンの立てた陽動作戦も効果を発揮し、ほんの十数人をエレオノスが切り殺しただけで救出も成功。プルトニオスの悪意について吹き込まれていたヒエロニュモスも、彼の行動に感動し、尊敬の念を新たにするのだった。

 救出作戦が成功した頃、リカータでは古参の兵士達が広場に集まっていた。彼らはアナクゼオン&バルトロマイオスに対し、「陛下を出せ」と要求。話を聞くと、シラクサをこれ以上敵の手に渡しておくのは我慢ならん、攻撃命令を頂きたい、という事らしい。そんな所にプルトニオス凱旋。兵士の士気は高まった。

 そんな所にハンニバルからの書状が。父親の首については一応礼を言いながら、プルトニオスをひたすら挑発する内容だった。これに対し、ウラニオス等NPCが激怒して使者を切り殺してしまった。結果、いやおうなしに戦闘準備が開始された。

3.シラクサ攻略・序盤
 まずは情報収集。すると、ハンニバル軍の半数程度を占めるガリア傭兵はカターニャに略奪に向かったらしい。敵が分散しているのを良い事に、アナクゼオンは一計を案じた。まずガリア軍に対して

「ローマがガリア地域に侵入、族長会議はローマに付く事に決定した。お前達は本国の決定に反している」

 との誤情報を流し、さらにハンニバルの真意についてある事無い事吹き込んでガリア軍を離反させてしまったのだ。これに対し、ハンニバルは副将と数千の軍のみを派遣。一騎打ちでガリア軍の族長に対し、副将は捨て身の攻撃で相打ちに持ち込んだ(李、桃に変わって僵れる)。結果、ガリア軍は四散した。

 そして、シラクサ城壁前。城壁にはソーラ・システムが輝いていた。ひるむPC達。そんな中、象に乗ってハンニバル登場。いつもの如く、
「オリーブ漬けはいかがでしたかな?」
などと挑発するアナクゼオンに対し、ハンニバルは城壁に合図する事で答えた。すると、太陽光線が反射され、アナクゼオンに向かって降り注いだ!…結局、運良く直撃を避けたため全治3日の怪我であった。

 お互いに戦前に行った挑発が効いていたため、第1R(今回は攻城戦のため、1Rが3日と換算される)は力攻めとなった。が、城壁から降り注ぐ太陽光線に対してシラクサ側はどうする事もできず、シラクサの鉄壁の守りを確認しただけに終わった。

 戦闘は膠着したまま第3Rに突入。その夜、再びリスタルキスの生首の目撃情報が。さらに、見張りの兵士がやはり肌を紫に変色させて死んでいる。もちろん、傍らには「神罰」のヒエログリフが。その夜は雷雨だったのが、ぬかるんだ地面にはまだ足跡が残されていた。

兵を率い、急いで追って行くPC達。すると、以前プルトニオス&エレオノスが城内への侵入に使用した隠し通路の出口付近で人影に追いついた。が、稲光に浮かんだその姿は、正に「宙に浮かぶ生首」だった。

 実はこれはトリックであり、黒服を着た人間が闇に紛れて生首を支えていたのだが、これにPCではアナクゼオンだけが気付けない。無神論を撤回しかねない勢いで怯えるアナクゼオン。そんな事をやっている内に、生首は隠し通路へと消えていった。

4.シラクサ攻略・中盤
 このままでは埒があかないので、アナクゼオンとエレオノスが城内に潜入し、ソーラ・システムの奪取を行う事になった。生首が出たその日の夜の内に、嵐に紛れて海側から泳いで(!)潜入する二人。流石にそんな潜入方法に対しては誰も警戒しておらず、首尾よく潜入に成功する。

 まずはアルキメデス邸へ。そもそもソーラ・システムはアルキメデス以外には原理がわからないはずなのだ。行ってみると、彼は元気に研究に励んでいた。ソーラ・システムの件について尋ねると、確かに使用法を教えたとの事。裏切ったのか、という問に対しては、自分は学者である以上、物を問われれば答えてやらねばならない、ハンニバルは中々に良い生徒だった、と答えてくれた。彼にとってはただそれだけの事らしい。あきれる二人。

 アルキメデスから、カルタゴ軍が城内で何かを作っていると聞かされて現場へ向かう二人。行ってみると確かに高さ数mの何かが建てられていたが、布がかぶせられていて何なのかはわからない。警備の兵士から聞きだそうとしても、どうも一般兵には内容が知らされていない様子。てがかりも無いので、とりあえずこの件は置いておく事になる。

 最後に当初の目的であったソーラ・システムの奪取。エレオノスが食事係に成り代わり、エジプト印の「気持ちよくなるお茶」を盛る事で警備係を無力化した。それでも判断力を持っていた連中は、哀れにも名剣アンサラーの錆となった。

ソーラ・システム奪取成功。しかし、バルトロマイオスのなじみの店から人手を集めて城などに向けようとしても、訓練不足のためかうまく焦点が合わず、上手くいかない。

 一方城外。プルトニオスはこの間も攻撃を続けていたが、生首騒動の噂が広がり士気が下がってしまっている事もあり鉄壁の守りを崩せないでいた。そこへ奪取成功の報告が。早速翌日、ここが勝機と全力で攻勢をかける。するとハンニバル軍はソーラ・システムが奪われたショックからか自壊気味に(GM1ゾロ)撤退して海上に逃れて行った。

 城内では、ハンニバル軍が作っていた謎の建造物を調べる事に。覆いを取ってみると、それは巨大な牛の像だった。とりあえず警戒しつつアルキメデスに調べさせるPC達。すると恐るべき事が判明した。この中には「ギリシアの火」と時限発火装置が入っており、所定の時間に爆発して城内を火の海 にするようになっていた。急いで無力化するPC達。(作業したのはアルキメデスだが)

 一方、廃墟となった一角に怪しい人影が居ると聞いて捜索してみると、懐かしい「死神」の隊長がやって来ていた。エジプトが壊滅状態になったので、依頼完遂と判断して成功報酬をもらいにきたらしい。彼の口から、増改築により迷宮と化している下水道に何者かが潜んでいる事がわかる。さらに、毒の事を告げると「一族の面汚しめが・・・」というお言葉。どうやら「死神」の中にエジプトの宗教に転んだ奴がいたらしい。

5.シラクサ攻略・終盤
 とにかく下水道を探索するエレオノス&「死神」。下水に入ってみると、妙な臭いがする。何と、下水道に例の「ギリシアの火」が流れている。急いで人員を警戒にあたらせるが、ここまで広がってはどうしようも無い。とりあえず毒使いを捜索する事に。

すると、少し開けた空間に祭壇が設けられ、壁には何やら聖印らしきものが描かれ、さらに祭壇の上にはなぜか腐りもしていないリスタルキスの首が置いてあった。ここがアジトであった事は間違い無いが、しかしそこは無人だった。彼は仇討ちのために動いているらしい。すると目標は・・・アナクゼオンだ。という事で急いで戻るエレオノス達。

 その頃、アナクゼオンは自室で書物を読んでいた。すると、部屋の角の陰が妙に濃くなる。不思議に思ってよく見ると、それが次第に人が潜んでいたためだとわかる。「覚悟」と襲い掛かってくる男。両手にはよくわからないが毒らしき粘性を持った液体が塗られている。迷わずに超絶能力を使い、「三十六計逃げるが勝ち」 と廊下へ逃走するアナクゼオン。どうにか逃亡に成功し、男は駆けつけてきたエレオノスに切り捨てられた。

 数日後、農繁期も近付き打つ手の無くなったハンニバルはシラクサ港に乗り込んでプルトニオスに一騎打ちを申し込む。しっかりとエレオノスから名剣アンサラーを借り、プルトニオスはこの挑戦を受けた。

 戦うこと数合、運勢の傾きもあり、プルトニオスの剣がハンニバルの胸を貫く。しかしハンニバルは慌てずに自分の船の兵士に合図を出した。とたん、船が爆発・炎上した!父の敵であるプルトニオスだけは道連れにするつもりらしい。プルトニオスには打つ手が無かった(エレオノスは李になる事を嫌がった)ため、結局は命数を使って生き延びる事に。ともかく、ここに数年来の戦乱は終わりを告げた。

6.エンディング
 戦乱はひとまず終わり、PC達もそれぞれの道を歩む事になった。

 エレオノスは結局プルトニオスの心を射止められず、失意のうちに「死神」と共に故郷へと旅立っていった。

 バルトロマイオスはユリエナとの結婚も済ませ、シラクサを地盤に地中海世界一の商人へと成長していった。

 そして、プルトニオスとアナクゼオン。2人はシラクサの支配権をヒエロニュモスに譲り、カルタゴを新たなる地盤として西はジブラルタル海峡・イベリア半島から東はシリアに至る大帝国をわずか10年で築き上げた。

・・・しかし、プルトニオスにはもはや命運が残されていなかった(命数残り20)。砂漠を越えての遠征中、病魔に倒れたプルトニオス(命数判定失敗)。

 もはや回復の見込み無しと知るや、アナクゼオンは「あなたに必要なのは私ではなく医者でしょう」とだけ言い残してガリアへ旅立っていった。二百年後、ガリアへ侵攻したカエサルは一切の神を信じず、極めて高度な組織・戦術を駆使するガリア人達を前に苦戦する事になる。

 一方プルトニオスには死期が近付いていた。アナクゼオンは戻ってこなかったが、残りのPC達は集合。しかし、悲しんでいるのは同席した彼の子供達だけだった。

 妻のアンティア姫は「後は任せよ。何か言い残す事はあるか?」としか言ってくれず、「死神」の秘術により10年前と容姿の変わっていなかったエレオノスは「私の医術があれば助かったかもしれませんね」と、バルトロマイオスは「墓の受注は既に済んでいます」とありがたり言葉を言ってくれる。

 結局ほとんど誰も悲しんでいない病床で、プルトニオスは死んだ。最期の言葉は「私は死すとも、天に上り神 となってこの国を守るだろう」との事だった。わずか十数年で地中海世界をほぼ制したプルトニオスの偉業は、確かに後世、アレクサンドロスと並び称えられる事になった。

キャンペーン 完


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