ハーラン・エスリンへ

システム:パイレーツ!WILDWEST GM:初代ボブ

●システム紹介
パイレーツ!の追加オプションシステム。
アメリカ西部開拓時代の荒野を生きる男たちが主役。

●PC紹介
PC1 ダグラス・モーティマー 男 38歳 (PL:bluehorse)
妻を寝取られたバツイチ。女ってのは信用ならねぇ。
PC2 リー 男 25歳 (PL:へんでろぱ)
中国人脱走労働者。母から授かった刀を手にガンマン蔓延る西部を生きる。
PC3 イワン・スミス 男 21歳 (PL:ストライプ)
親の借金を返す苦労人。返済が終わったら田舎で静かに暮らしたい。
PC4 ヘクター・レイノルズ 男 28歳 (PL:にかわ)
元雑貨屋スリルジャンキー。銃弾が頭をかすめる瞬間こそ至高。


●本文
【憎む町】
 南北戦争が終わって半年、彼の悪名高き賞金首ドレッド・ドレッドソンを追って4人の賞金稼ぎチームがポートダルの街を訪れる。到着した彼らを迎えたのは女子供老人しかいない寂れた町と、人々の冷ややかな視線だった。一行が首をかしげていると、突如ならず者二人が街を襲撃する。これを難なく撃退した一行は、先ほどとはうって変わって態度を軟化させた街の人々に“英雄”として歓迎されるのだった。
 街の人々によると先ほどのならず者は南北戦争の敗残兵たちであり、戦争で女子供老人ばかりとなったこの街にやってきては好き勝手を働いているのだという。
拠点の位置を吐かせるためにこの街唯一の保安官は捕らえた二人の男を保安官事務所の拷問室へと引っ張っていく。ドレッドの情報が何か聞けるかもしれないと踏んだ四人はこれに同行した。

 拷問部屋では保安官によって男たちが無慈悲な暴力を振るわれていた。その苛烈さとは対照的に、保安官の表情は一切の感情を消し去ったかのようだった。リーとヘクターがその様子を静観する一方、ダグラスは保安官には目もくれず、物珍しそうに拷問器具を眺めている。荒事を好まないイワンはいたたまれなくなって早々に酒場へと引き返していった。
 拷問は時間の経過とともに激しさを増していく。傍観者を決め込んでいたはずの二人がそれとなく保安官を宥めるが、彼はその手を緩めようとしない。ついにヘクターも耐えかねてその場を後にしようとしたとき、下っ端が泣き叫びながらアジトの場所とそこの装備であるガトリングガンについて明かした。ドレッドの情報ではなかったが、とりあえずの拷問の成果を得られたという事で、血に染まった保安官を残してダグラスを引き連れた二人は足早に拷問部屋を後にする。

 一足先に酒場に戻っていたイワンは街の人々に“英雄”としてはやし立てられていた。どうやら今日の夜、彼らのおごりで歓迎の宴を開いてくれるらしい。ドレッドの情報が得られないかという打算のもとイワンは世間話に参加する。すると、賊の頭領がどうやらドレッドであるらしいという事が判明した。他にも何か情報はないかと先ほどの賊についての話をしていると、突然老人が騒ぎ出した。
「あいつらもクズだが、ジェームズはとんでもないクズなんじゃあ!」
「おい、爺さん。そいつの名前を出すんじゃねぇ。」
 酒場の主人は苦々しい顔をして老人をたしなめる。
 前触れなく現れた“ジェームズ”という名前について町民に尋ねるイワンだったが、みな一様にその詳細を話そうとはしない。何を聞いても暗い表情を深めるばかりだ。イワンは茶を濁して宿として与えられた酒場上階の部屋へと引き上げるしかなかった。

【裏切り者ジェームズ】
 イワンが与えられた部屋でくつろいでいると、保安官の拷問を見守っていた三人が引き揚げてきた。町民との世間話の内容を共有したのち、彼らは酒場での宴へ向かう。そこには昼間姿を見せなかった人々も集まり、相変わらず女子供老人だけではあるが、それなりに賑わっていた。宴が盛り上がってくると、酒場のマスターが拷問に立ち会っていた三人に尋ねる。
「それで、あいつらの拠点はいったいどこにあるんだ?あのクズども、やっぱり口を割ったんだろう?」
 四人は子供たちに聞かれないよう外に出したうえで、残党たちの拠点の場所を町民たちに告げ、同時にそこに向かって彼らを蹴散らすつもりだという事を伝えた。それを聞いた町民たちは沸き立ち、ため込んだ賊への恨みと罵倒を口々に叫ぶ。それに混ざって、昼間イワンと話していた老人の声が響いた。
「あいつらもクズだが、ジェームズはそれ以上にクズなんじゃあ!」
 老人の言葉に、盛り上がっていたはずの人々は途端に沈んだ様子を見せる。唇をかみしめ、こぶしを握り、その話をするなと老人に諭す。
 イワンが酔いつぶれた老人を外に連れ出すが、白け切ってしまった酒場はとても宴を続けるような雰囲気ではなく、残った人々も続々とその場を後にした。酒場に残ったヘクターがマスターにジェームスという人物について尋ねるが、やはりはぐらかされるばかりだった。

 一方そのころ、イワンは道端で泥酔した件の老人を介抱していた。
「で、ジィさん。そのジェームスってやつは結局誰なんだ?」
 その話をするのを頑なに拒む町人は今一人もいない。イワンに促されるままに老人は、ぽつり、ぽつりと語りだした。
 昔のこの村はどこにでもある普通の村で、今のように女子供老人だけというわけではなかった。状況が一変したのは先の南北戦争からだ。徴兵されたこの村の男たちは、情報部隊に配属された一人を除いて、皆同じ部隊に配属されていた。情報部隊の男はその後運悪く敵の捕虜となり、拷問の末に同郷の男たちが所属していた部隊を壊滅に追い込む情報を提供してしまった。この情報部隊の男こそがジェームズだったのだ。町の人々は皆ジェームスを恨んでいるのだ。自分の夫を、息子を、父を殺したのはジェームズだと。
 
 イワンがこの村の真実を知る少し前、酒場の路地に面した裏口では、店主の怒号が響いていた。ぼろ布をまとった老婆が残飯をあさりにやってきていたのだ。振り上げられた店主の右腕を前にして、老婆はしわがれた悲鳴を上げる。あまりに哀れなその姿に、リーとヘクターは店主を宥め、自分たちに免じて彼女を見逃してほしいと頼み込む。しぶしぶといった様子で店主はそれに応じ、老婆は逃げるようにその場を去っていった。

 老人を送り届けたイワンは、その帰り道、昼間宿の窓から見て興味を引かれていた町はずれの洞穴へと訪れた。洞穴の中からは異臭が漂い、その入り口には腹を開かれたネズミが転がっていた。明らかに何か生き物の気配がする。イワンが洞穴に向かって声をかければ、その奥からおびえた様子の老婆が現れた。それは先刻酒場にて罵られていた老婆だった。
こんな場所に人がいることを不思議に思ったイワンが訳を聞けば、なんと老婆はあのジェームズの母親で、息子を恨む町の人々によって村八分にされているのだという。
 夫はすでに村から逃げ出し、身寄りも、この街を出るすべすらないと語る老女は、「せめても」と自分の息子の名誉の戦死を望むほどに追い込まれていた。不憫に思ったイワンは、自分が依頼を果たしてこの街を出るときには彼女を連れていくと約束した。

【ならず者討伐】
 翌日、保安官の協力のもと装備を整えた賞金稼ぎ一行は意気揚々と賊のアジトへと向かった。
聞いていた通り、ドレッド・ドレッドソンをリーダーとした14人の盗賊たちが町の近くにガトリングガンを備え付けたアジトを構えていた。
 イワンとヘクターはライフル片手に遠距離から敵をひきつけ、その間にダグラスが近接戦闘を得意とする青龍刀使いのリーを自慢の名馬に乗せて、ガトリングガンへと迫る。
 万全を期したはずの戦闘だった。しかし、彼らは14という数を見くびりすぎていた。最初こそ何人かの賊を倒し善戦していたが、やがてヘクターとリーが相手の銃弾を喰らい、意識を失った。ダグラスもかなりの重傷だ。何とか抵抗を続けるイワンへ頭領であるドレッド・ドレッドソンが痛み分けという形での決着を申し出た。これを受け入れ、一行は命からがら町へと帰ることとなった。
 この時回収できなかったリーの青龍刀は、母親の形見だった。

【帰還】
 戻ってきた一行を街の人々は広場にて歓声とともに出迎えるが、賊の砦で起こったことを説明すれば、困惑と失望の表情を浮かべた。広場にいる誰もが言い淀んでいたその時、一人の松葉杖の男が現れる。左足首から先を失ったこの男こそ、街の裏切り者ジェームズだった。
町の人々は先ほどまでのやり取りを忘れたかのように、ジェームズに恨みのこもった視線を向ける。しかし、ジェームズはそれに対して何も気が付いていない様子だ。今にも手を出しそうな村人たちをイワンが「最後くらい母親に会わせてやってもいいだろ。」と説得し、何とかジェームズを広場から連れ出した。
村人たちの目から逃れると、一行は町の人々の本当の思惑をジェームズに伝える。真実を知ったジェームズは、一行と共にこの町を出ることを決断した。この街に戻ってきたのも自分の母親のためで、彼女もいっしょに連れて行ってくれるのならば思い残すことは無いのだという。
 ジェームズを送り届ける道中、ヘクターは面倒ごとに首を突っ込むものではないとイワンに諭す。リーもそれに同調するが、イワンは引かなかった。
「イワンがいなかったら賊との戦いで死んでいた。どうせ拾った命だ。君の選択にしたがうよ。」
 ヘクターのその言葉をきっかけに、四人の目的は一つになった。

 ジェームズの母親のいる洞窟にたどり着いてその奥へ声をかければ、老女が顔を出し、ジェームズを見て目を丸くした。みすぼらしいその姿を見て駆け寄り、いたわりの言葉をかけるジェームズとは対照的に、老女は激昂する。
「お前さえ裏切らなければ!お前さえいなければ!私がこんな目に遭うことは無かった!」
「お前が死ねば私はまた街に受け入れてもらえる!死ね!お前が全部悪いんだ!死ね!死―ね!死―ね!死―ね!」
ジェームスは失った自分の左足を見つめて立ち尽くす。毒々しい模様の黒い蛇がその足元に纏わりつく。その時、こわばったジェームズの腕をイワンがつかみ、半ば無理矢理に洞穴の外へと連れだした。蛇はするりと洞穴の暗闇に溶けていった。
 外へ出た彼らを待ち受けていたのは銃を抱えた町の人々だった。その眼には老婆と同じく憎しみの色が宿っている。
「そいつを置いて行ってくれ。あんたたちは一度とはいえ賊からここを守ってくれた。手荒なことはしたくない。」
 賊を拷問していた時と同じく無表情な保安官が、銃を向けながら一行を説得する。
「本当にみんなのことを思っているのならば、拷問なんかには負けない。」
「自分だったらそんなことはしない。」
 町民たちは心無い言葉をジェームズに投げかけ始めた。ジェームズはただ自分の失った左足を見つめている。果たしてこの中に同じ状況で彼よりも立派に行動できる人間は、何人いただろうか。黒い蛇が再び現れ、ジェームズの足元でとぐろを巻いた。
 銃口を突きつけられ、5人は立ち尽くす。しかしその時、ダグラスだけが一歩前に進み出た。
「こいつは全くの他人に違いないけどなぁ、俺には信頼していた奴に裏切られる気持ちってのはよぉくわかる。」
「このセリフ、一回くらいは言ってみたかったんだ……ここは俺に任せて先にいけぇ!」
 その言葉に背中を託し、一行は馬に飛び乗る。馬をうまく操れないジェームズはイワンの後ろに乗せられた。彼の足元にいたはずの蛇はいつも間にか姿を消していた。
 ダグラスが何とか足止めをしているが、それでもいくつもの銃弾が馬上の彼らに向かってくる。そのうちの一つが、ヘクターに命中した。それを放ったのは狂気に侵された保安官か、酒を酌み交わして一晩の宿を貸してくれた酒場の主人か、それとも一行を英雄と慕った少年か。命知らずの賞金稼ぎは今、善良な町民が放った一発の弾丸に倒れた。
 残されたリー、イワン、ジェームズは必死に馬を急かし、町を脱出した。
「どうして俺を助けたんですか?」
「俺は、この仕事が終わったら、賞金稼ぎからは足を洗ってまっとうに、普通に生きようと思ってたんだ。でもここであんたを見捨てたら、もう胸を張って生きることはできない気がした。」
「まぁ、2人も仲間を死なせているんじゃ、もうどっちの選択があってたんだかわかんねぇけどな。」
 荒野を二頭の馬が駆けていく。
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