やべーやつが村に来た

やべー奴が村に来た
GM:五月の黒いうさぎ
システム:新クトゥルフ神話TRPG

探索者たちは京都府北部の山村、美川村の住人である。元は寂れた村だったが、地域おこしが盛んであり新規移住者も増えている。さらに村おこしの一環として、試験的に村全体を5Gエリアにする計画まで進行中である。そんな中、村にある夫婦が引っ越してくるが、彼らはどうにも様子がおかしく……

PC紹介
PC1:小間沢洋介 27歳 男 最近村に来た若手農家
PC2:茂田源治 69歳 男 ハイテク農業ジジイ
PC3:源須流歌 31歳 女 村の電気修理屋
PC4:野高武夫 42歳 男 派遣されてきた技術者

 5Gエリアの実装まで残り数日を切ったある日、美川村で農業を営む小間沢と茂田の二人の元に、農家仲間の酒井という男が訪ねてくる。最近越してきた夫婦、丸内夫妻のことで相談があるという。彼らはどうやらジャガイモを作ろうとしているようだが、「無農薬・自然農法」にこだわっており農薬を一切使っておらず、そのくせまともな知識もなく育てられていないという。
 見かねた他の農家が助言をしようにも、話が通じず取り合ってくれない。しかしそうは言っても、病気や虫に発生されては他の農家も困るので、一度小間沢や茂田も一緒に来て彼らに注意してくれないか、という話だった。一行は翌日彼らが村民会館で開くらしいサロンに行って注意する事になった。

 一方その頃、源と野高は従事していた5Gエリア構築の作業も大方終了し、後は来週の実装を待つだけという段階になって村役場の人から相談を受ける。どうやら丸内夫妻という人たちが何度も5G反対と苦情を入れてきており、なんとか工事は終了したもののこのままでは来週の実施に影響が出かねないというものだった。二人は彼ら夫妻に対して説明を行うためにサロンへ行くこととなった。

 当日、村民会館の前で合流した探索者たちは丸内夫妻のサロンの元へと向かったが、何を言っても彼らは話を聞き入れなかった。数人はどうやら反コロナ派のようでありマスクすらしていなかった。小間沢と茂田が、夫妻の紹介していた「自然農法」を謳う農法の間違いを指摘するが、彼らは自分たちが間違っているわけがない、自分たちのことが認められないから嫌がらせをするんだろうとまともに話すら通じない。そんな中、探索者たちは彼らが育てているというジャガイモの種芋に目がとまった。夫妻はそれを「宇宙からの力が秘められた芋だ、なんかミゴさんとかいう人からもらったんだ」と言っていたが、それは既存のどのジャガイモとも違う品種である事が理解できた。

 もはや相互理解は不可能だという結論に達した探索者たちが帰ってから数日後、ある朝探索者たちが目覚めると村全体が濃霧に包まれており、電波や電気が全て遮断されている事に気がついた。慌てて外に出ようとする探索者たちだったが、ふと彼らの心の中に「ここを離れたくない
」「家の中にいたい」という考えが湧き上がった。
 探索者たちが無理矢理に外へ出ると、そこは10m先も見えないほどの濃霧と、歪に成長していた植物を目にした。合流した探索者たちはなんとか村の外へと出ようとするが、再び探索者たちの心の中に「村から離れたくない」という強い思いが湧き上がった。茂田と野高がその思いに打ち勝ち、村の外へと車で出ようとしたが濃霧の中を走っているうちに再び元の村の入り口に辿り着いてしまった。そして霧の中に、巨大な甲殻類と羽虫の混ざりあったような生物のシルエットを発見してしまった。

 村の外へと出られないことが分かった探索者達が村へと戻ると、憔悴仕切った丸内の夫が現れた。「あなた達、なんなんだこれは!」「妻をどうしたんだ!そうか、そうか僕たちが邪魔になったのか!」「早く逃げないと、ヒャハハハ…」と、とても正気ではない様子でどこかへと走り去ってしまった。不審に思った探索者達が丸内夫妻の家に向かうと、先日まではそれなりに生えていたはずの畑のジャガイモが全て消え去っていた。家の中を探索するうちに、夫妻の寝室で妻の死体を発見した。その死体は、先日までの若々しい姿とは打って変わって全身が灰色に萎び、ひどい皺とひび割れに覆われた姿だった。

 さらに探索を続けると、夫のものと思われる手記を発見した。内容は、村に来る前にある人からジャガイモの種芋を分けてもらったという事、そして育てているうちに突然全て枯れてしまった事が書かれていた。源と野高はそれを読んで、ジャガイモが枯れた日が5G電波を試験的に発した日だという事に気がついた。また、夫妻が以前紹介していた種芋の説明書を発見したがそこには一定の周波数帯の電波に弱いので気をつけるようにと書かれていた。

 夫妻の家を後にした探索者達は村の役場の職員から、電波障害が起こっており電波基地局の様子がどうにもおかしい、詳しい源と野高が行って調査を頼みたいと言われる。村外縁部の基地局へ向かおうとする探索者達だったが、途中でますます霧が濃くなっていった。車では危険と判断した探索者達は途中から徒歩で向かうが、やがて基地局の側にたどり着くとオゾンの匂いとともに霧の中に無数に輝く光に遭遇した。それは明らかにこの地球の存在ではなかった。物質的な物ではなく、しかし明らかにそこに存在する何かであった。

 謎の異常存在に体力を吸われながらも、電波基地局の内部に入り込んだ探索者達は、一部損傷した機械を迅速に修理し、5G電波の発信に成功した。その途端、窓の外の霧が段々と晴れていき、やがて村は元の姿を取り戻した。
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