秘密を持つ者たちの旅立ち

本記事は持ち回りキャンペーン(PLが一話ずつ順番にGMをする形式のキャンペーン)の一部抜粋です。

◆PC紹介
PC1: ザック
シャドウのグラップラー/スカウト/エンハンサー。
笑顔を絶やさない青年なのだが、なんとなく怪しく、良心からの発言が悪いようにとられるのが不憫。「夜道にはお気をつけて(善意)」
秘密: 実は暗殺を生業とする組織を抜けてきた。大切な人を手にかけたことがある。

PC2: ピオニー
「一見人間」のライダー/ファイター/エンハンサー。
明るく元気な少女。暑くてもマントを決して外さない。
秘密: 実は蛮族(ガルーダのウィークリング)。マントを外さないのは蛮族の証である翼を隠すため。

PC3: ルーカス
アルヴのプリースト/ジオマンサー。
強い思いを持つ純真な少年。眼帯をしている。パーティーの癒し枠。
秘密: 家を出てから船に着くまでの記憶が無数にある。それは一体何を意味しているのだろうか?

PC4: クロノア
エルフのマギテック/シューター。
早撃ちが得意で空飛ぶ鳥を軽々と射抜いて見せる。少し自信家。
秘密: 名家の出だが、命を狙われた過去から正体を隠している。内心では他者への恐怖と疑念が渦巻いている。
GMと兼任。

PC5: ルドス
メリアのコンジャラー/セージ/レンジャー
持って回ったような言い回しを好むが、実際には裏表がない人物でお人好し。
秘密: 本人に自覚はないが、その出自には迷宮が深く関わっているらしい。

NPC1: キャメル
実力と人望を備えた船長。PCたちが乗る船(キャメロット号)を発見した人。

NPC2: シーラ
補佐官かつ技術者。最近船の中で発見されたルーンフォーク。なぜか記憶がかなり失われている。
◆本編
○オープニング
PCたち5人はキャメロット号で仕事をしている顔馴染みである。今日もいつも通りの朝がやってきた。

「おはようございます……」今日も目の下にクマを作ったザック。またいつものように悪夢を見たのだろうか?
「おはよー!今日もいい天気だね!ほらほら、そんな暗い顔しないで!」といつも明るいピオニー。今日も体に合わない大きなマントを身につけている。
「みなさん、おはようございます。コボちゃん(友人のコボルド)が朝ご飯の支度をもう済ませていると思いますよ」と穏やかなルーカス。
「おはよう」と言いながらも警戒を解かないクロノア。彼はザックを殊更警戒しているようだ。
一同が朝食を取りに食堂に入るとルドスが既に席についていた。「君たち、おはよう」睡眠の必要がない、メリアである彼の朝は早い。

PCたちが朝食を取っていると、船長であるキャメルが声をかけてきた。どうやら5人に頼み事があるらしい。実は5人は顔馴染みでこそあるものの、一緒に冒険をしたことはない。何かが起こるのだろうか?

○船長からの依頼
一同が船長室に集まると船長であるキャメルが口を開いた。

「実は、今まで行ったことがないこのエリアに舵を取ろうと思う。」

そのエリアにはまだ行ったことのないたくさんの島々、嵐吹きすさぶ領域、などたくさんの冒険が待っていそうだ。

「だがな、この船はガタが来てしまっている。このままでは不安だ。そこで船のエンジンのコアになる魔動核を見つけてきてくれないか?」

どうやらこの船がじき到着する島、プレアデス島には魔動機文明時代の遺跡があり、そこにはエンジンのコアに使えるものが眠っているらしい。ふと疑問に思ったPCたちは「今の船はいつから使っているのか?どういう経緯で手に入れたのか?」などを聞こうとしたのだが、キャメルの武勇伝語り(n回目)が始まってしまい、結局聞けず仕舞いに終わった。

○島での情報収集
プレアデス島にて一同は遺跡についての情報を収集することにした。すると以下の情報が手に入った。

冒険者ギルドにて
・遺跡にはそこまで強い魔物はいない
・このギルドに所属する冒険者の依頼達成率は最近高くない。なぜだろうか?

さらに、この辺りの遺跡を発見しては情報をギルドに提供しているフリッツ氏からも情報を得られた。彼はマギテックの冒険者のようだ。

フリッツ氏からの情報
・魔物としては魔動機系が遺跡には潜んでいる
・遺跡には罠が仕掛けられている、落とし穴があるらしい
・冒険者の依頼達成を邪魔する輩が最近近くの遺跡に出没している

冒険者が宝を見つけたところでそれを横取りしようという輩が現れることに、PCたちは不穏な思いを抱いたが、かといってすぐさま対策ができるような問題でもなさそうだったので、とにかく警戒しつつ一同は遺跡へと向かうことにした。

遺跡へと向かう途中、一同は、ピオニーの騎獣であるダウレスを恐る恐る撫でたり、オークが切り立てほやほやの無農薬の木でできていると話したりと交流を深めた。この時点でのPCたちは、お互いが大きな秘密を抱えていることなど知らないのであった。

○遺跡にて
遺跡は洞窟のようになっていた。遺跡に入ることを決意したPCたちは、後から侵入するものを警戒して罠を設置することにした。ザックが入り口に手際よく罠を設置しようとするとクロノアが爆弾発言を放った。

「まるで今までたくさん罠を仕掛けてきたかのような手つきだね」

凍りつく一同。ザックは「褒めてくださってありがとうございます」と涼しく返したがなんとなくPCたちは気まずい空気になったのだった。

○決戦!遺跡の番人その1!
その後も一同は探索を続けた。

ザックが落とし穴を見つけクロノアを助けることなどがありつつ(下には棘が敷き詰められていた!落ちていたらどうなっていたことか)、一同はとある部屋にたどり着いた。
そこには緑の宝箱が置いてあった。どうやらセンサーがついており、開けることにより侵入者を排除するための番人が現れるらしい。

頭も使えるが意外と脳筋な側面もある一同は、戦闘準備を軽く行ってから宝箱をためらうことなく開けた。果たしてやってきたのは魔導機、バルバ3体であった。

開幕早々ルドスのスパークが炸裂し、ダウレスがテイルスイープで敵を薙ぎ払う。ザックは素早い身のこなしで殴りと蹴りを叩き込む。そして……。

「こんな力、使いたくなかったのに……!」

ピオニーが蛮族の証である翼を用いて鋭い風を起こす。一同は思った。「隠している割にはあっさり力を使うんだな」と。嘘だろ?暑くてもマントをつけていたのに?

そんなこんなで一同は難なくバルバを撃破したのであった。落ち込むピオニーを優しくスルーして、一同は剥ぎ取りを行った。

○突撃!遺跡の番人その2!
第一の番人をあっさり倒して一同は再び落とし穴を見つけた。事前の情報では下に棘が敷き詰められていると聞いていた。洞窟の入り口はそうだったが、この落とし穴は下に部屋があるらしい。

次の部屋に進むと、今度は隠し扉と青い宝箱が見つかった。すると青い宝箱からにわかに殺意が漂う。なんと、この宝箱はデックチェストトラップというモンスターだったのだ!さらに宝箱のセンサーも発動してザーレイ2体がやってきた。

先制を取られる形で始まった第二の戦闘は死闘となった。

回避のおぼつかないダウレスが早々絡め取られてしまった。問答無用でダメージが入り、それを庇おうとしたルドスのオークも痛手を負う。この時点でダウレスのHPは残り2、オークのHPは残り1になってしまった。

窮地を脱しようとルーカスが回復魔法を唱えるが、ここでまさかのファンブル。冒険開始早々のピンチに一同は表情を固くするが、ルドスの回復によりなんとか形勢を立て直すことができた。

リソースをほぼ使い切る形で辛くも勝利を収めた一同は宝箱の中身を確認した。中には「勇敢なる者よ、先に進み栄光を掴み取れ」というメッセージが。地下迷宮にすごい宝が眠っているのだろうか?

○しばしの休息、そして情報収集
流石にこれ以上の探索は困難と一同は判断し、遺跡に潜った痕跡を丁寧に消した上で、一度船で休息をとった。罠は一度回収し、隠し扉も丁寧に隠蔽した。その後、「別のダンジョンに潜っていた別のパーティーが依頼を失敗したらしい」という話を耳にしたので、念の為情報を収集することにした。得られた情報は以下の通り。

・魔法文明時代の遺跡に潜っていた
・奥にあるものを持ち帰るだけの依頼だったが失敗した
・突然あたりが煙に包まれたと思ったら、宝箱の中身が空になっていた
・妨害は煙玉をはじめ、いろんな手口があるらしい
・突然のフラッシュや急に動きが鈍くなるなどの妨害が報告されている

フラッシュといい動きが鈍くなるといい、犯人はどうやらマギテックらしい?

○地下迷宮の探索
気を取り直して一同は地下迷宮に入ったのだが、どうやら人が忍び込んだ形跡がある。ところが、先ほど見つけた隠し扉には使われた形跡がなかった。落とし穴経由で何者かが地下迷宮に入ったようだ。

地下迷宮を探索したところ、二つの部屋を見つけることができた。一つの部屋には、ついさっきのものと思われる足跡が続いており、もう一つの部屋にも人の気配があった。侵入者は足跡が続いていた方の部屋にいると推測した一同は、その部屋を開けた。すると、なんと中にいたのは遺跡の発見者、フリッツだった!

確かに言われてみれば、宝を見つけた冒険者を襲う人物が現れるのは決まってフリッツ氏が発見した遺跡だった。まさかこの男が黒幕だったのか?

自らを疑う眼差しを受けてか、べらべらとフリッツは話し始めた。

「ふーん?ここまで来たとは?ここまで用心深いとは予想外だったよ」
「俺がフリッツになりかわって、冒険者の宝を奪っていたのさ」

偽フリッツは得意げに笑う。

「ははは……俺はこの迷宮の全てを知っている」

しかし、一同は思った。

「(隠し扉の存在は知らないんだろうな……)」

そんな一同の考えを読んだのか、彼は語る。

「フッ、勿論隠し扉のことは知っていたさ。しかし、隠し扉の痕跡を残したくないから、わざと落とし穴で出入りしていたのさ……」

一同、やや疑いの眼差し。彼は語り続ける。

「ここで安全に宝を手に入れて隠れ家として使い、この島の情報を外の仲間に流していたんだ」

その情報に激震が走る。なんとかして食い止めねばこの島が脅威に晒されてしまう。彼が手を鳴らすと、彼はみるみると魔神ホロウへと姿を変え、上からさらなる敵、ブルドルンが現れた。

初めて相対する強力な魔神、そしてブルドルン。二者とも高い命中と回避を誇る。おまけにガンによる攻撃を行うので、一度当たってしまえば大ダメージは避けられないこと必至だった。1ターンで1体を倒すと決め、一同は武器を構えた。

○激闘!魔神戦!
攻撃を避けることが難しいピオニーを中衛にし、まずはザックがブルドルンに殴りかかり、攻撃は二発とも命中。ルドスとルーカスが援護魔法を飛ばし、クロノアが銃撃を叩き込む。それに対してホロウも二丁拳銃で迎え撃つが、ザックはひらりと交わした。

形勢がPC達にやや傾き一同は猛攻を仕掛けようとするが、ここで魔神ホロウは奥の手、スモークボムを放った。この魔法は行為判定を-4するうえ、抵抗することができない。しかし……果たしてその目はピンゾロ、一同はピンチを免れた。

その後は出目が腐り始めたことで戦線は膠着したが、ルドスとルーカスの援護が効いていることにより、一同はホロウをじわじわと追い詰めた。

「くっ……!」と苦しげなホロウにピオニーが止めのメイスを振り下ろす。

「これが仲間の力だ!」

それを聞いたホロウは口元を歪めて笑うのだった。

「お前たちが仲間とは笑わせる。せいぜいキャメロット号と、呪いの旅路を歩むがいい!」

○ピオニーの正体
ホロウの捨て台詞に重い空気が流れる中、ルドスがピオニーに対して口を開く。

「その翼……どう弁明するつもりだ?」

ピオニーの瞳が揺れる。それを受けてルドスはこう答えた。

「……君は自らが被る不利益を承知の上で翼を使って私たちを助けたのだろう?君自身がどう思っていようとその行為は称賛に値する。」

「……ありがとう」とピオニー。

ルーカスはポケットから羽を取り出した。
「知っていましたよ。ピオニーさん、いつも羽落としていましたし」

それを受けてピオニーは声を絞り出した。「これからも、一緒に旅をしてくれる?」
一同は快く言うのだった「勿論さ」と。

○遺跡に隠されていたもの、そして成果報告
もう一つの部屋には、ほんもののフリッツが転がされていた。彼を救出した後にホロウがいた部屋を探索すると、「力を示せ」と書かれた隠し扉を見つけた。一同は扉にダメージを叩き込み、青く輝く魔動核を手に入れた。

一同は船長と冒険者ギルドに今回の件を報告した。そして、彼らが遺跡で手に入れた魔動核により強化された船は大海へと動き出した。

ホロウが死に際に放った言葉の真意はなんだったのだろうか?時折意味ありげな言動を見せるPCは何を隠しているのだろうか?

この後一同は、突然命を狙われ、仲間さえ信じられなくなり、果てには対立するのだが、そのことをまだ彼らは、知らない。
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