2001年度後期後半キャンペーン

「StarlightRhapsody」



第3話 鎮魂曲“ウルド”〜未来の礎〜



父の形見

 教授が攫われ、如何にして居所を探すかに頭を悩ますことになるフリードら。まずはできることからだとしてニシカワは、どさくさに紛れ確保した謎のアイテムをフリード、司馬、ソルマに手渡す。おそらく殴って使うのだろうというニシカワのアドバイスに従い、ソルマは念を込めてみると、光の刃が生じた。だが、司馬は電灯程度の光が点った程度。フリードはさらに違った。スパークが飛び散る程度だけだった。しかし、宇宙風水師である司馬は、フリードが持っただけで生まれた力強い波動の流れを感じ取っていた。

 フリードは父がこれと同じものを持っていたことを思い出す。ニシカワにこれは父のものかと訊ねる。ニシカワは肯定し、これを先代が持っていたために宙賊から狙われ、自分に息子を託して何処かへ行ってしまったのだと、先代が失踪したわけを話す。この謎のアイテムに父の面影を感じるフリード。そして、きっと教授を助け出してみせると父に心の中で誓う。さらに、このアイテムは“一時的に借りた”と言うことにして、対メッテルニッヒ用秘密兵器として利用することにする。武器の名前はとりあえず“サイ・ブレード”と命名した。



フリードの決意

 翌日になっても以前教授の居所は明らかにならない。もどかしさを感じるフリードらである。フリードはを心配して訪ねる。桂はフリードの励ましによって元気を取り戻したようだった。しかし、翌日以降部屋に閉じこもったまま姿を見せないからだ。

 途中、野次馬をしようとしたラシュロンと司馬を発見する。ラシュロンは桂が心配だったから見に来たのだが、フリードが来たから心配ないでしょうと言ってその場から立ち去る。冷やかしに赤面するフリード。また、司馬は助教授に会いに来たのだと言って、本来の目的地であるとアレイスター・ドーマンの元を訪れる。

 気を取り直して彼女のいる部屋のドアをノックするフリード。気配はするも応答がない。今度は力強くノックし、桂さんいるの、と声を出す。すると、ワンテンポ遅れて中から返事が返って来て、扉が開く。出てきたのは桂であった。その彼女の目が少し赤く晴れていることにはっとするフリード。立ち話も何だし、ということで桂はお茶を振る舞う。

 桂の机には以前にはなかった膨大な資料が積まれていた。それは、ステイン助手が残した未解読の碑文から教授の居所がわかる手がかりが得られるかもしれないと、寝る暇を惜しんで訳していたのだ。その健気な態度に胸を打たれるフリード。「メッテルニッヒの野望をうち砕き、きっと教授を助け出してみせる」と彼女に誓う。部屋には彼女一人。フリードは大胆にも彼女の肩を抱きしめる。不意の行為に桂はこわばるが、それは一瞬のこと。桂は「信じるわ」と微笑みを返した。



訪問するもの、されるもの

 ドーマンの元を訪れた司馬であったが、彼の部屋から懐かしさを感じる波動を知覚する。「やはりあなたも同じなのですね」と謎の言葉を発するドーマン。司馬が今ひとつ理解しきれずにいると「さっきの言葉は忘れてください」とお茶を濁す。司馬は何か手がかりはないかと訪ねるも今はないという答えが返って来るのみ。教授を助け出す依頼を得られないかと探るも、依頼を頼めるだけの資金はない台所事情。教授が見つかった場合には幾ばくかのお礼はさせていただくということで決着。意見成立と言うことで、二人が握手をすると、一瞬司馬の脳裏に過去の記憶がよみがえった。自分がエージェントとして何処かの組織で活動をしていたことを。さらに自分が使っている風水の技術もその組織から授けられたことを……。「あなたとまた会えるような気がします」というドーマンの声で我に返った司馬は「ええ」とうなずき、彼の部屋を出ていった。

 またその日はソルマに訪問者が現れた。非公式にやってきたジェスティン・ディッキンソンであった。彼女は口外しないこととした上で、秘密事項を伝える。その内容は、メッテルニッヒ討伐のためユニスの安全保障理事会臨時会議でステラフォースの派遣を決定し、同時に箝口令を敷く予定であるというもの。さらに、明日、ステラフォース情報局のジャスティ・ディキンソン中尉がフリードに依頼を持ってくることも教えた。ソルマは彼女の連絡に感謝しつつ、去っていくその背中を見送った。



ステラフォースからの使者

 翌日、ジェスティンの予告通り、ステラフォースからの使者がフリードを訪ねてきた。その使者は、ジャスティ・ディキンソン中尉である。彼は、「どういう訳か宙賊と関わりがあるようだね」と鎌をかけてくるが、フリードは賢明にも答えなかった。中尉は、フリードの行為はさも当然とし、早速依頼の話を始める。

 依頼の内容は、近々行う大規模な演習用に軍需品を運ぶという簡単なもの。なぜこの話を持ってきたかと訝しむ。すると「宙賊に備え各星系の軍事力は惑星防衛のため動けないためだ」と答える。交渉に当たるラシュロンが報酬などの条件を確認すると、相場にプラスαが付いた額である。ただ出港日が後に伝えるという点に懸念を示すが、借金のこともあり背に腹は代えられず、それほど悪くない仕事だとしてフリードは引き受けることにする。

 また「自分たちは教授を捜しているので、もし情報を得たのなら伝えて欲しい」と申し出る。中尉は「機密に関わることは話すわけにはいかない、だが、宙賊の出没情報なら流そう」と約束してくれる。それに感謝の辞を述べると「君たちとはよいパートナーになれそうだ」と、中尉はフリードにいう。それを苦々しく思いながらソルマは聞いていた。



皇帝からの手紙

 その夜、アッシタリュド宇宙商会宛にメールが届いた。その差出人はなんと宙賊皇帝アドルファス・メッテルニッヒ本人からであった。ラシュロンがウイルスがいないかなどと安全を確認した後、そのメールを開いた。その文面は、「余は貴殿らが一時的に所有している赤い宝玉の返却を切に望んでいる。そこで、貴殿らが大切に思う御方とその宝玉を交換したく思う。場所、時間などは貴殿らが取引に応じると連絡した場合、即伝えよう。余は貴殿らが賢明な判断を下されることを願っている」とあった。

 時限爆弾をつけよう、ステラフォースを利用すべきかなどと策を練るため話し合っていると、遅れてもう一通メッテルニッヒからメールが来る。そこには、惑星の都市が空からの攻撃で消滅するシーンが映し出されていた。そして変な考えを起こすのは賢明ではないぞとの脅しである。フリードは取引に応じるとの返事を送る。すると暫くしてから場所などをしてしたメールが送られてくる。時は明後日、場所は武装中立地帯、燃料補給基地として利用されている無人宇宙ステーションである。ただ渡すのは癪だとして、ニシカワの提案で宝玉のケースに小型ニュークリア・ボムを搭載することに決定した。



決断

 一端話し合いに決着が付いたところで、ソルマは、上司のジェスティンにこのメッテルニッヒとのやりとりを全て暴露しに行く。ソルマとステラフォースの関係を知らずにステラフォースに協力を得られないかと言うフリードと、知っていて言うラシュロンのこともあり、ソルマは派遣を掛け合う。また、宙賊と対等に渡り合えるような武装と、超能力を強化するドラッグを要求する。ジェスティンは、ステラフォースに情報を流すといい、また武器を運ぶ荷物の中に入れておくと約束する。ドラッグは効果は緩やかだが危険性の少ないものと、効果は劇的だが危険性が高いものの2種類があり、どちらを選ぶか訊ねる。劇的な方に「俺を廃人にする気か」と思うが、とりあえず両方とも送ってもらうことにした。

 一方ソルマと入れ替わりで、フリードたちのもとにミティがやってくる。彼女は、宙賊が集結しつつあることを告げる。また、ISCAの情報網を駆使して作成したメッテルニッヒがいそうな宙域の星図を渡す。ミティはメッテルニッヒかなり危険な行為だと心配する。だが、司馬は「伝説的トラコンとして名をはせるジェイムズ・カルディナートもこうした危険を幾つも乗り越えてきたのだ」とフリードを諭す。その言葉にフリードは力強く頷き、心配してくれたミティに感謝を述べる。ミティは成功を祈っていると言って去っていった。

 その後、ラシュロンは帰ってきたソルマに首尾はどうだと訊ねる。それに対して「お前の命もかかっている……俺は組織の犬だ」と自暴的に吐き捨てるのだった。また、ミティが持ってきた星図をステラフォースに忘れず送るのだった。



切ない笑顔

 翌朝、フリードのもとにステラフォースから仕事の詳細に関して連絡がある。出発は明日。場所および日時は、メッテルニッヒがしてしてきたものと同一だった。ステラフォースに対しての工作がうまくいったとソルマらは少しほっとする。

 必死に解読をおこなっていた桂は、フリードの元へ駆け込んでくる。ステイン助手が残した資料の中から驚くべき事実が明らかになったのだ。彼女が見せた解読文には、エルドラド文明崩壊の理由と破滅を示唆する言葉が記されてあった。

空を繋ぎ 我らは禁断の扉を開いた
〈悪霊〉は彼の地より現れた
我らは憑かれ そして狂った
すべては〈悪霊〉の思うままに
我らは助力した
さらに〈悪霊〉を招くため
〈邪眼〉が生み出された
そは彼の地への道を見せるもの
三つの瞳がそろうとき その道は開かれる
その時 我らは滅びる
だが、我らは一縷の望みに託した
〈邪眼〉と冷ややかなる〈顔(かんばせ)〉を分けた
再び一つに集まることがないように
我らは我らとともに〈悪霊〉の道を封じる
まだ見ぬ人たちよ
同じ歴史を歩むことがないように
我らは眠り そして祈る

 桂は、この碑文が告げる〈邪眼〉や“三つの瞳”と呼ばれたものが例の宝玉に当たると解釈できると説明する。そして世界を崩壊に導くこの宝玉を絶対に渡してはいけないと頼む。だが、その表情は複雑だった。教授には返ってきてもらいたい、しかし、赤い宝玉を渡してしまうと世界が破滅するかもしれない。苦渋に満ちた面もちであった。

 フリードは「メッテルニッヒの野望は阻止し、教授を助け出してみせる」と力強く言う。でも、桂は教授を取り戻すということは赤い宝玉を渡すことであるため、自分の都合で世界を滅ぼすわけにいかず、やりきれず柳眉を寄せ唇を噛む。その姿を見たフリードは「渡す、というのはいわば餌だ」という。相手がほしがっている以上、向こうから接触を求めるのは確実。メッテルニッヒ一味を叩くちょうどいい機会だとアピールする。だが、裏を返せば、畢竟、フリードは危険だとわかっていながらもその中に飛び込んでいく、ということである。彼女の視線は下に注がれる……彼の身を案じて。フリードは静かにそしてはっきりと桂に言う、「心配しないで、僕は必ず帰ってくると約束する」と。それは自分に言い聞かせるようでもある。桂はフリードの瞳をまっすぐ見つめる。そして、「信じる、きっと帰ってくるって」と微笑んで見せる。フリードは、その彼女の切ない笑顔を喜びに変えるためにもきっと帰ってくると心に誓った。



約束の日

 とうとうその日がやって来る。ジェイムズの乗るブレイヴウルフ号に見送られ、フェーニクス号は発進した。取引の場所にジャンプアウトすると、そこには戦略級重巡洋艦が既に到着していた。ステラフォースの姿はない。そしてメッテルニッヒ側の誘導に従い、華麗なソルマの操艦術でステーションに接舷する。ステーションには空気がないので、ソルマが調達してもらった軍用パワードスーツを着て外に出た。

 交換の場所はステーションの中心部を挟んで向かい合わせ。フォッカーは宝玉を見せるように要求し、共鳴することを確認する。教授は身動きがとれないように拘束されている。本人か確かめるためも、孫娘の名前や死亡した助手の名前を聞き出したり、碑文の内容を言うようになどと聞く。だが、これらは少し調べればわかることばかりだったため不安に思い、さらに踏み込んだ内容を問いかけようとする。しかし、いい加減にしてもらおうというメッテルニッヒ側の言葉に従わざるをえず、質問はうち切られた。

 交換の方法として、ラシュロンは慣性に任せて同時に押し出すように提案する。双方は同じタイミング、同じ速さで押し出す。その影で、ソルマは、過激な効果の方を1本打つ。そして、ちょうど教授が手を伸ばすと確保できるところに来たところで、ソルマは宝玉が戻ってくるようにとテレキネシスを発動させる。それを合図に、司馬は、教授の後ろに回り込み、安全圏へと向かう。指揮をしていたフォッカーは念動力に気づいて、部下に宝玉の入ったケースを投げよこし、謀ったなと教授に向けて発砲。交渉は決裂した。

 フリードとニシカワは教授と司馬の遮蔽になるべく矢面に立ち、ソルマはもう1本ドラッグを打ち、好機に備える。ケースを受け取ったフォッカーの部下はニシカワの仕掛けの発動で爆散、フォッカーは前衛の二人に向けて怒りの発砲をする。フリードたちも撃ち返すが、その間にフォッカーの生き残った部下は撤収し始める。

 ソルマは再び念動力で取り返そうとするが、“力”と放すまいとする腕力が均衡して取り寄せられない。フリードとフォッカーの撃ち合いが続く間に、司馬は無事教授を戦闘領域からの離脱に成功。それを見届けたソルマは念動力で宝玉の奪回を再試行する。だが、突如現れたメッテルニッヒ配下のテレポーター(瞬間移動能力者)の力が若干勝り、逃げられてしまう。司馬が宝玉の波動を読むと、既に重巡洋艦の中に移動している。フリードらは、戦略級重巡洋艦の主砲で小惑星が破壊されたことを思い出し、速やかに船に退避する。



追跡

 船に戻ったときには、既に重巡洋艦はジャンプインしていた。教授はメッテルニッヒらの行き先を話す。そこは、まだ知られていない遺跡がある非植民惑星である。またその遺跡には、彼らは強大な力を秘めた兵器が眠っていると信じているが、実際は世界を破滅に導くゲートが封印されているのだという。そして、残りの青い宝玉も〈顔(かんばせ)〉に相当する石版も、メッテルニッヒの手の内にあることを知らされる。

 ソルマはこの場にいないステラフォースに対してどういうことだと司令部に連絡を入れる。すると「計画としては、ジャンプアウトしたメッテルニッヒ艦隊を包囲し一網打尽にするつもりだったが、目標の宙域にいたのが戦艦ではなかったため待機していた」との返答。所詮は寄せ集めの兵力と苦々しく思いながら、メッテルニッヒの行き先を教えて、一方的に回線を切り、目的地へとジャンプインする。

 ソルマの航法の座標計算の精度が勝り、フェーニクス号はメッテルニッヒの船より先にジャンプアウトする。そこはメッテルニッヒの艦隊のど真ん中であった。遅れて、重力場の乱れが観測され、メッテルニッヒらが乗った重巡洋艦がジャンプアウトしてくる。メッテルニッヒ艦隊の砲撃をかいくぐり、いくらか被弾しつつも、惑星へと向かう重巡洋艦を追いかける。遅れてステラフォースの艦隊もこの宙域にジャンプアウトしてくる。フリードらは、メッテルニッヒ艦隊をステラフォースに任せ、遺跡へと降り立ったメッテルニッヒを追った。



運命の悪戯

 メッテルニッヒらは、力業でどんどん遺跡の奥へ侵攻する。その戦力はおよそ1個小隊。遺跡の防衛機能を破壊しながら、死傷者を置き去りにして、奥へと進む。その後を追うフリードたち。ニシカワがの遺品のカメラで遺跡を撮影しつつ、一行は進む。遺跡の防御設備は破壊された跡だが、当然メッテルニッヒの配下による妨害を受ける。足止めするのは3人。フリード、司馬、ニシカワは、射撃をかいくぐり、接近戦へと持ち込んで倒していく。そして、残り1人となったところで、ニシカワが先に行けとフリードにいう。「おやっさんを一人残すわけにはいかない」とソルマは残り、サイ・ブレードの刃を飛ばして距離をおいて攻撃する。

 残った二人は戦うが、ソルマの攻撃は逸れ、ニシカワは絶体絶命のところまで追い込まれる。ニシカワは戦意を失うも何とかしのぎ、やっとソルマの攻撃が当たり倒すことができる。この間にだいぶ時間のロスをすることになったが、それが後に悲劇をもたらすことになるとはこの時は誰一人として気づかなかった。



最終決戦

 先行したフリード、司馬、ラシュロンであるが、既にメッテルニッヒは石版をはめる用意をしていた。陳の命を奪った“神像”と同形の〈守護者〉がいたが、それは倒された後だった。

 フォッカーはフリードに対して「ここまで邪魔をしに来るとは……その勇気はほめてやろう。だが、これ以上邪魔をさせるわけにはいかないのでな!」と言って斬りかかる。その気迫に負けずとフリードも吼える。「何を言う、俺たちがここに来たからにはお前たちの野望は終わりだ!」というフリードの叫びとともに人類の運命がかかった戦いの火蓋は切って落とされた。

 戦力比はメッテルニッヒ側8人に対して3人。駒に余裕があるメッテルニッヒは、2人の護衛に守られながら、石版をはめ始める。フリードはフォッカーと一騎打ち。司馬とラシュロンがそれぞれ2人ずつ相手をする。

 フリードは「父さん、力を貸してくれ」とその手に力を込めてフォッカーに斬りかかる。サイ・ブレードを持つもの同士の戦いとなれば、破壊力ではフリードが勝る。だが、その腕の差は歴然だった。有効な一撃が入らず押される一方。だが一方のフォッカーにとっては、フリードがなかなか倒れないことにいらだちを隠せなかった。そして間隙をぬってフリードが裂帛の一太刀浴びせる。フォッカーは「やはり貴様はあのときに殺しておくべきだった」と憤怒する。



ラシュロン憤死

 司馬は、二人を相手にしながらも確実に追いつめていく。しかし、ラシュロンは防戦するのみだった。メッテルニッヒの精鋭の前に、ラシュロンはなす術なく、幾太刀も深手を負い、ついには致命傷を負ってしまう。助かる見込みはない一撃、さらに、その一撃がエンジンの暴走を引き起こした。ラシュロンは自分の命の炎が消えゆく感覚の中で、最期の力を振り絞る。ラシュロンは「後は頼む」と言い残し、志半ばで精鋭二人を道連れに爆炎の中に消えた。そしてフリードたちのラシュロンを呼ぶ悲痛な叫びが響いた。遅れて到着する、ニシカワとソルマは、その爆発を目にして何事だと思う。それが、ラシュロンの最期の姿であることを知り、愕然とする。



死闘の果てに

 ニシカワはメッテルニッヒの方へ向け、ロケットランチャーを撃つ。だが外れる。ラシュロンの死に発憤したソルマも、護衛へ向けて発砲する。新たな侵入者に対して、護衛は射撃で応戦する。だが、ラシュロンの残留思念が彼を呼ぶのか、決定的一打を加えられず、逆に被弾する。戦況は思わしくないが、ここに来て戦闘の構図は変化している。そして希望の光がかすかだが見え始めていた。

 二人を倒した司馬は、銃撃戦の中に飛び込み、護衛の一人に接敵する。その時、後方から7つの波動が近づいていることを感じる。

 ニシカワは無反動ライフルに持ち替え、メッテルニッヒを狙うが命中しない。護衛を倒したソルマは、激しい方10本を一気に刺し、念動力で石版を滑らすように試みる。その試みは成功し、メッテルニッヒはわずかであるが手間取ってしまう。その間に司馬は護衛を屠り、ついにメッテルニッヒへと斬りかかる。しかし、宙賊皇帝の名は伊達ではなく、紙一重のところでかわす。そして、とうとう石版がはめられてしまう。メッテルニッヒは「これで余は宇宙の支配者となるのだ」と哄笑する。

 石版がはまったその直後、7つの波動が到着する。その波動の持ち主は、漆黒のパワードスーツを身に纏った7人であった。彼らの手には、剣、槍、十手など、それぞれフリードらの武器と形状は異なるが、同じ不思議な輝きを持つ武器が握られていた。

 フリードと一騎打ちを繰り広げていたフォッカーだが、一瞬スキが生じた。新たに出現した人物に注意が逸れたのかもしれない。格下の相手なら気づきもしない程度のスキである。しかし、フリードは違っていた。そのわずかなスキを見逃さなかった。フリードが繰り出した光の刃は彼の心臓を捕らえた。

 その7人は、メッテルニッヒに向かって光の刃を飛ばす。だが、司馬の浴びせた一太刀が彼の命を奪うこととなった。

 メッテルニッヒ、フォッカーと倒されたことで、フリードたちを阻むものはいなくなった。だが、石版ははめられ、破滅をもたらす異界へのゲートが開こうとしていた。少しずつだが、瘴気が漏れだしてくる。薬の力で“神の領域”に達したソルマは、念動力で強引にゲートが開くのにブレーキをかける。

 7人の中の〈貪狼〉と呼ばれた十手を持った一人が、ゲートを封印するためにフリードらに協力を求める。その声に聞き覚えがある気がしたが、それを問うだけの時間はない。封印のためのアイテムとして、サイ・ブレードを使うという。だが、ゲートを封印するだけの力を引き出せるものは限られていた。この場にいるのは、謎の7人、そしてフリードだけであった。彼らは司馬の羅盤の力を借りて最適な陣形を組む。そして〈破軍〉と呼ばれた一人の合図とともに、フリードがゲートを封印するために集積した念をゲートに向けて一気に打ち出した――きっと桂との約束を守るため帰ってみせると想いを込めて。その想いが通じたのか、ゲートは閉じていく。そしてこのとき、宇宙は破滅から救われたのだ!



つかんだ勝利

 謎の七人組は、ゲートが閉じたことを確認すると「これらは我々が封印する」と言って、赤、緑、青の3つの宝玉と石版を拾い上げる。フリードは七人組に対して「何の目的でやってきたのか、何者なのか」と誰何する。すると、「全ては世界の安定のために」と答えるのみ。そして用は済んだとこの場から立ち去っていく。ただ別れ際、謎の七人組は、司馬に「君には素質がある。一緒に来ないか」と誘う。だが、司馬は自分の居場所は別のところだと言って誘いを断った。

 フリードはフォッカーのむくろを担ぎ、外へ出る。皆が遺跡を出たときには、艦隊戦は終結していた。練度で勝るメッテルニッヒの艦隊に対して物量で勝負したステラフォースの勝利だった。しかし、9割の船を失うという薄氷の勝利であった。ここに全ての戦闘は終結し、フリードらの働きによりメッテルニッヒの野望はうち砕かれたのだ。



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